心が無い人間は、名誉や財産があったとしても人間の尊厳が無く、嘘を重ねる人間は嘘に嘘を重ね、自分が正しいと主張し、それをたしなめられると開き直り、大きい声を出し人を威圧する・・・そんな人物描写が法廷のシーンで想像させられた。
5巻を一まとめにして考えれば、中盤くらいからの主軸となる医療裁判の内容自体は、癌の認識には非常に参考になるもので、感心する箇所が多々あるのだが、残念ながら、佐々木商店関連の人物描写がいささか説得力にかけるもので、感情移入しきれない部分がある。医療関係の取材などで、疲れていたのかなあ?と思ってしまうほど、描けていない。医療関係の難しい概念や、用語を非常にわかりやすく解説してくれているのを終始感じていたが、それでも扱っているテーマが重いので、専門知識を持たない自分としては、感情移入しやすい人たちなだけに、この部分で、羽を伸ばせなかったことが、物語全体のメリハリの薄さを感じる原因になった。(5)へ
医療裁判の民事裁判を終えた後の続編ともいうべき内容で、その控訴審と財前医師の学術会議選挙を控えまた大学病院を中心とした登場人物たちの画策、思惑が入り乱れる。<P> 新潮文庫1巻から3巻までの内容は昭和40年7月に新潮社より刊行され、その4巻から5巻の内容は『続白い巨塔』として昭和44年11月に新潮社より刊行されたと本書を読んで初めて知った。4巻は全5巻中の中でページ数も最も多く、医療裁判に関わる弁護士たちの奮戦ぶり、財前を訴える患者側家族、証言台に立つ人たちの苦悩、庶民の生活が胸を打つ。また、大学病院で財前の下になる医療裁判の患者の受け持ち医、柳原医師の気持ち、とらざるを得ない行動が「白い巨塔」を説明しているようで特に気になる。<BR> 権威を持つ人々、それに憧れる人々、実をとり真実を追究する人々、名誉、お金、幸せ、人それぞれの価値観、思いがまざまざと描かれていうようで興味深く面白い。