本書で一番印象的だったのは、ストーリー展開や皮肉な最終章よりも、作者の綿密な取材とそれによってもたらされた詳細な描写だ。<P> 手塚治虫のマンガ「ブラックジャック」が、医学博士である作者故のリアルな表現で、医学教育上も十分役立つと言うような指摘を読んだことがあるが、それに先んじて活字で具現化しているのが本作品だといえるのではないだろうか。開腹して取り出した臓器を手に取り、触診したうえで病巣を確認し摘除する場面を読んでいると、あまりのリアルさに感嘆するばかりだった。<BR> 作者は作家専業になるまでは新聞社勤務で、あの井上靖の元で取材や文章に対して研鑽を積んだそうである。そのときの経験が徹底した取材を行って、事実を正確に伝える姿勢を育んだのであろうことは間違いない。<P> 作品としては十二分に有名であり、二度にわたるTVドラマ化で話題にもなっている。劇画的ともいえる人物描写と、テーマの重さ、それを書ききる力強さを感じさせる作品だ。大きく前編と後編に分かれるが、いずれも緩急をつけた描写が印象的だ。前半の教授選挙や、後半の法廷での応酬シーンなど、たたみかけるような手に汗を握るクライマックスを味わうことができる。<BR> 最終章、財前の迎えた結末と、それに対する財前の客観的な手紙、そして里見の台詞には思わず涙してしまった。
3巻で一回物語の区切りがついているとは言え、<BR>4巻までの1700頁は5巻に辿り着く布石だったと思えるほど、<BR>5巻は感動的でした。<P>何より、登場人物の本当の姿が良く見えるのが、<BR>5巻の最後だと思います。<BR>財前、里見、東、ケイ子、又一、<BR>彼らの「本当の気持ち」をラストの場面が<BR>鮮明に映し出してくれています。<P>社会的な反響を考慮し、<P>膨大な量の取材、研究をして書き上げられたこの小説は<BR>そのスケールの大きさとともに、<BR>感動を与えてくれます。<P>最後に、<BR>財前とは全く違う性格の人間だと思う自分が<BR>1巻から読み進めていくにつれて、<BR>財前に共感したことに驚きました。
最後の落ちは色々な意味でかなりショックでした。。人生の意味を小1時間ほど考えました。テレビ版を見て続きが気になりついついよんでしまったんですが、小説でしか味わえない独特の表現が用いてあるので、僕が受けた印象はテレビとはだいぶ異なるものでした。(あたりまえか)とにかくスケールの大きい小説なので、一度読んでみてください。