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高熱隧道 ( 吉村 昭 )

吉村氏の作品を読むのはこれが初めてですが、一気に引き込まれました。<BR>淡々とした筆致で描く凄惨なトンネル工事。憑かれたように穴を掘り進む技師と人たち。そして、自然の脅威。最近流行りのプロジェクトXのような爽やかなもんじゃありません。ですが、感動はその何十倍もあります。但し、それは負の側の感情でもありますが。<P>個人的には結末が気に入りました。場面が目に浮かぶようでした。読後、しばらく胸に何かが残る小説です。

昭和15年に完工した黒部渓谷第3ダム 隧道(トンネル)工事のノンフィクション。摂氏150度もの岩盤にひたすら立ち向かう人々。何物かに取りつかれたように貫通を目指し過酷な自然に人知の限りを尽くす技師たち。高熱に死すもの、発破事故で引き千切られる肉体、そして瞬間風速1000mで襲い掛かる驚異の大雪崩。山は人夫たちの生命を無造作にすり潰してゆく。太平洋戦争直前の電力確保の国策として貫かれた隧道は工事終了までに300人もの命を呑み込んだ。死をすら許容した男達のこれは戦場の記録である。

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