実はこの本、20年近く前、高校の夏休みの宿題であった読書感想文用に読んだ本である。当時の私には遠藤周作と言えば、「狐狸庵先生」の名で非常に軽妙で愉快なエッセーを書いていた面白いオヤジであり、相前後して竹中直人の顔真似のネタになっていた愛すべきオヤジであった。そんな状況から、「さっさと呼んで宿題片付けよっ!」と軽~い気持ちで手にしたのだが...夏休みが楽しくなくなったことは言うまでもない。高校生には「難しい!」の一言に尽きる。それまで本もろくに読んだことの無い高校生にはかなり高いハードルだった。でも悪戦苦闘しながら読み切った。そして思った。「軽妙な文章を書く遠藤周作とこの重厚な文章の遠藤周作とは同一人物なのか?だとしたら人は何故このような二重人格みたいな行動ができるのであろうか???どっちが本物なのか?」と、この本の主人公ほどではないが苦悶した。この本は敬虔なキリスト教徒である氏の宗教観が表れていると言われている。従って、あまり宗教に傾注しない私には難しかったのである。数年して、氏が「県人会のような日本的な組織は全く理解できない。」と語っていたのを目にしたことがあるが、私にはよっぽど「県人会」がある理由の方がイメージしやすいと思った。それだけ氏との距離があったのである。でも読むに越したことはない。読まなければそのように考える機会もなかったのだから。当時の私と同じくらいの今の高校生も時間があれば読んでみよう。「葛藤」ということが少し分かるかもしれない。氏のエッセーから入り、先ず、親しみをもつのも一つの手だ。そういえば、確か、氏の生前に「沈黙」のミュージカルがやっと完成したと思ったがあれはどうなったのだろうか?
キリスト教が弾圧されていた時代の話がもとになっている。ひどい扱いを受け、神に助けを求めても答えはなくただ"沈黙"が続く中でのキリスト教徒の葛藤がとてもリアルに描かれていて、いろいろ考えさせられる本だと思う。
高校生の頃読んだのですが、今の所私の中では1番の小説です。困った時に神頼みをしても、神はなんにも答えてはくれません。それで、この世には神も仏もないと思っている人に読んでほしいです。