池波正太郎という男の作法を通じて、大人の男の磨き方を学ぶ本である。<BR>著者自身は時代が違うと断りを入れているが、今の時代の我々が必要とするものがここにある気がする。<BR>文章の紹介自体が目次になっているが、目次の文以外にも、<P>「(本当の大阪人、東京人は)決して他国の食いものの悪口というのは言わない」<P>「(男のおしゃれは)自分の気持ちを引き締めるためですよ」<BR>「(チップをやるのだって)男をみがくことになるんだよ」<BR>「公衆電話にいて、人が待っているのもかまわず延々とやっているような女は駄目」<P>「つまならいところに毎日行くよりも、そのお金を貯めておいて、いい店を一つずつ、たとえ半年ごとでもいいから覚えて行くことが自分の身になるんですよ」<P>等々、文中のちょっとしたディテールに粋か野暮かの差が出ており、読んでいて暗黙知を刺激する。<P>語りおろしの相手方、佐藤耕介氏の質問も絶妙。
池波正太郎氏が年下の編集者を相手に、衣食住あらゆることにまつまわる考え方を語る、という体裁になっています。食べ物について例をあげると、頼み方や食べ方の話が具体的に語られていて、これはこれで「大人の作法」になっていて非常に参考になります。しかし背景には、人と人の間の取りかたといった「心の作法」のようなものがあって、今はそうしたものに触れる機会が少ないような気がするので、非常に貴重に思えるのです。話題として取り扱われているのは、ごく日常的な素材ですが、その分、この本を読むと毎日がより豊かなものになるような気がします。
池波正太郎さんの時代小説は殆ど読ませて頂いていますが、その登場人物を彷彿させるような気持ちの良い生き様・考え方が分かり易く書かれています。毎年の新入社員や、仲の良い若い友人には必ず勧めています。若い人に限らず全ての読書人にお勧めします。