本巻は前巻に続いてマリウス、スッラの時代から始まる。ローマはいまだ混迷から抜け出せず、ローマ内での内紛、反乱がどのような背景で起こるのか、またそのような状況下でも領土をどんどん拡大していくローマの凄さを実感できる本である。<P>本書ではオリエントや海賊討伐戦などかなり多くの戦役が取り上げられているが、少し残念だったのはこれらの戦役についての記述がかなりあっさりしていたことだ。確かにポエニ戦役と比べれば割かれるページ数が少なくなるのは当然だが、もう少し詳しく知りたいな、という戦役がいくつかあった。特に第2次ミトリダテス戦役でのアルメニア軍との戦闘で、ルクルス率いるローマ軍の戦死者が5人!というのは、いったい何が起こったの?と興味津々になった。<P>本巻では若き日のカエサルも登場するが、まだ主役ではない。その意味で、カエサル登場までの舞台設定はこの巻で十分整ったと言えるだろう。
歴史は英雄のみで作られるわけではない。<BR>英雄出現は歴史の必然として、その前段階の歴史があることを忘れてはならない。一般に英雄出現の前段階は混迷の時代であり、小英雄の挫折の時代でもある。<P>ローマも、右肩上がりの発展に陰りが出始め、その修復に種々の小英雄が必死の改革を試みる。しかし歴史の女神は、それらの小英雄の試みを無視し時にはあざ笑うかのように、翻弄し続ける。<P>後世の私たちは、結果論の歴史しか知りようがないが、カエサル登場の舞台を整える混沌とした時代を、小英雄の苦悩と共に描く歴史書第7巻(文庫本で)、これはこれで読み応えがある。<BR>英雄はなぜ出現せねばならなかったのか?その理由を知ろうとすることも、歴史書を読む楽しみのひとつだ。<P>カエサル登場の必要として、小英雄の改革の試みとその挫折そして混沌の時代を描いている。
巻末部分の参考文献に、塩野先生のローマ人執筆へのスタンスが<BR>表されていると思います。<BR>言い訳にも聞こえますが、著者の意図が分かれば納得できるものだと思います。<BR>頻出する固有名詞に関することなのですが、確かに読み進めていくうちに<BR>色々違和感はありました。<BR>多少の専門的知識のある人ならつっこむところでしょうが、<P>著者も述べているように、学者が書く論文ではないのだから・・・<BR>自らを<アナーキー>というところに作品への愛情を感じます。<BR>「物語」としてもローマ史はいよいよ佳境へ。<BR>社会の構造的変化は共和政を瓦解させていく。<BR>その中でマリウスやスッラのような英雄はむしろ人間くさい。