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| 縛られた巨人―南方熊楠の生涯
(
神坂 次郎
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南方熊楠の生涯を彼の膨大な書簡など史料を交えながら紹介する。熊楠概論としては、よくまとまっており、読みやすい。熊楠の粘菌、民俗学、あるいは自然保護などにおける業績の解説は限られるが、それは本の性格上仕方がないだろう。一つ不満だったのは、引用文の原典(たとえば誰宛の手紙であるかなど)の記載がなかったこと。 生物学者として、民俗学者として桁外れの足跡を残した明治の巨人、南方熊楠。<BR>幼少の頃から天才ぶりを発揮し、晩年に至るまでを、詳細な検証、インタビュー、調査を踏まえた上で辿っていく。<P>幼少より神童ぶりを発揮しながら、学校になじめない。世界的に名が知られるようになりながらも無位無冠。破天荒で天衣無縫な自由人でありながら、だからこそなかなか自由に生きられない。熊楠の生き方はどの瞬間を取ってみてもエキサイティングだ。<P>彼のような、エネルギーにあふれた濃厚な人生は、それを読むだけでも勇気がわいてくるほどに、パワーにあふれている。熊楠入門にも最適の一冊だ。
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