紛れもなくホラー色の強い作品だ。しかもその最大の怖さは、設定だとか出来事などから来るものではない。緻密に描かれた、人間心理が何より恐怖を与えるのだ。<P>小野不由美は他の作品中でも「ここまで!」と思わせるほど人間を書きこむ。この「魔性の子」もその一つである。孤独、エゴ、絶望、妬心。様々な人間の心理を痛いほどに伝えてくるのだ。<P>彼女の作品で、「屍鬼」というものがあるが、あの怖さも人間心理によるものであり、しかしまた閉鎖空間の描写によるものでもある。<BR>対してこの「魔性の子」はただひたすら人間心理だ、と私は思う。そしてそれこそが「魔性の子」の魅力であろう。(誤解のないように言っておきたい。「屍鬼」もまた、魅力的で実にすばらしい作品だ。)<P>因みに「十二国記」!!リーズとの関連云々ということはあまり気にしなくてもよいと思う。「十二国記」のことを知らなくとも十分読める程にこの世界はきちんと積み上げられている。<BR>ただ、もし「十二国記」を知らずこの作品を読んで、あまりにもその世界が気になってしまった場合は是非「十二国記」をオススメしたい。
孤独・・・・・・というよりはどこか孤高を感じさせる描写の少年と、その<BR>周囲で起こる不気味な事件を軸に描かれる伝奇ホラー的傑作。<P>十二国記に先立って書かれた本作において、この後に続く壮大な世界<BR>がすでに完成されているようである。その意味では若干わかりにくい<BR>固有名詞が登場するが、それによって示唆される世界観の大きさも本<P>作の神秘性を高めている。<P>しかしそうした設定だけの魅力でなく、主人公の孤独から来る悲哀や、<BR>彼を取り巻く人物の心理が実にリアルに描かれている点が本作の真の<BR>魅力と言えるだろう。<P>十二国記を読んでからでも楽しめるが、作者の意図をなぞる意味でも<BR>やはり本作から読んでもらいたい1冊。
初めて読んだ小野さんの作品です。「十二国記」を知る前と知った後と二度、楽しめました。まだ読んでいない方はぜひ、最初に読んで頂きたいです。やはり「初めて」は特別だったのか、魅力的なキャラクターが多い十二国記の中、私の一番のお気に入りは、この“タイキ”なのですから。<P>ただ事件の描写は凄いです。ホラーが苦手な方はちょっと大変かもしれませんが、より十二国記(タイキ)を知り、楽しむ為には欠かせない作品です。この作品の後のタイキと学校の人たちの様子が気になります。