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| ジオラマ
(
桐野 夏生
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しっかりした短編集。広義でミステリーの範疇なんだろうが、文芸作品としても良質な作品が揃っている。読み手のイメージと作品が旨く組み合ってこそ、本書の良さが浮かび上がってくる。<BR>この作者の長編は読んでいたが、短編でこれまでのレベルまで表現できるのであれば、力量は間違いないのだろう。<BR>星4つです。 この作家はいわゆる広義のミステリー小説業界の中で一人だけ違う次元にいるように思える。<BR>気取らず、奇を衒わず、それでいて深淵に迫る。押し付けず、媚びず、それでいて説得力がある。<P>本書は短編集ながら、そんな感想を残す恐るべき名作だ。<BR>大げさに過ぎるが、そのようにしか表現しようがない。 短編集なので読みやすい。著者があとがきで書いている通り、庭先の石をどかしてみたときの気持ちを思い出してしまう。一見平凡そうな日常に潜む、醜い、でも妙に現実感のある真実。文章の巧さもだが、真実を暴く冷徹な目がすごい。個人的には、美貌のハーフ、カールの連作が好き。桐野夏生が初めて、という人におすすめします。
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