脛に傷持つ者同士、という笑子と睦月。 お互いを許しあって結婚したはいいものの、周りの人たちの雑音に繊細な二人は悩まされてしまう。 「水を抱く」ような結婚生活。 「ずっとこのままでいられますように」という願いは、もろくも打ち砕かれてしまう。<P>夫には男の恋人がいる。<P>「『でも、僕は男が好きなわけじゃないよ。睦月が好きなんだ』私は胸がざわざわした。それじゃあ私とおんなじだ」妻は「笑子にも恋人が必要だよ」という夫の提案をはねのけてしまう。<P>「睦月たちって銀のライオンみたいだって、時々思うのよ」 繊細すぎて傷ついてしまう二人。 泣きたいような連帯感を持った三角関係。<P>読み進めていくうちにだんだん心が透き通ってくる。そして悲しみさえも癒されるような優しさを持った物語だと思う。
私の周りでは、この作品に対する評価はまっぷたつに分かれる。<BR>「何回も読み返したい」もしくは「コレはもういいや」。<BR>そして、私は前者に属する。<P>私が何度も読み返したくなるのは、なんといってもこの作品の小見出しの秀逸さのせい。<BR>目次を眺めているだけで、なんとなく不思議な心持ちになれる。<P>水の中を漂っているような、真空の瓶の中に取り残されたような。<BR>それに誘われて本文を読み始めると…もう止まらない(笑)。<BR>それぞれのキャラクターたちの奏でる不協和音。<BR>なのに、何処か心地よくて、つい耳を傾けてしまう。<P>ああ、また読み返したくなってきた。<BR>目次を眺めてみよう。
複雑すぎる愛の話が読みたいのか自分でも判らないけれど、手元から離れない1冊です。<BR>誰の立場になっても切なすぎる気持ちがそこにあって、恋愛感情から離れた日常の中で読んでいても、いつも新鮮に心に届く話です。<BR>内容は込み入っているはずなのに、主人公の気持ちはまっすぐなので、その魅力を何度も思い出したくて読み返したくなるのかもしれません。<P>恋愛と関係ない生活をしている方にも(笑)、オススメです。