私は芸術のことは、サッパリ分からない。特に、絵はサッパリである。そのなかでも、本来の形がバラバラになって、デフォルマシオンされているのはてんでだめである。<P>そのキュービズムを顕現させたのが、ピカソらしい。そのピカソに関する、天才太郎の解釈とその歴史を解説してくれているのが、本書である。もちろん、ピカソ本人とも、われらが太郎は交流がある。ただただ、脱帽である。なぜか。その太郎の見識もさることながら、太郎の芸術にたいする、真摯な態度と情熱には、常人には及ばない、その天才性の故である。<P>この日本人太郎を持ちえたことは、われわれの誇りである。
私たちの世代にとって、岡本太郎と言えば「太陽の塔」であり、「グラスの底の顔」だ。あるいは青山の岡本太郎記念館。そこは常温のギネスを出す嬉しい喫茶室が併設されている。<P>さて、岡本太郎。「奇人」である。なんとなく作られた「奇人」のイメージが強くて、なかなか「アートの対象」としての岡本太郎に触れるチャンスはない。<P>本書は、岡本太郎のピカソへの想いと、ピカソとの交流を通して「アートの対象」としての岡本太郎に触れる「きっかけ」となり得る本だと思う。また、年代順にまとめた「ピカソ論」は、ピカソ鑑賞の手がかりともなりえるもので興味深い。<P>個人的には、冒頭の「岡本太郎による岡本太郎論」のようなものをもっと読みたかったように思う。しかし以外に多くの著作を残している!!!なので、他の本を併読することでその望みは満たされるのかもしれない。ピカソ及び岡本太郎の画集を入手したくなる本だった。