それにしても、第一勧業銀行(当時)から始まった金融界、そして総会屋との癒着は何故あったのか。又、何故大蔵省(現在の財務省)まで東京地検特捜部の捜査が及ぶまでになったのか。その問題はかなり複雑な問題である。<P> この本は、第一勧業銀行を中心に、総会屋との癒着が何故発生したのかを辿り、同時に他の大手銀行でも発覚した金融腐敗の構図が時々図で表示されている。私はこの事件は知っていたが、一体どこまで事件が広がりを見せていたのかは知らなかった。つまりこの本によって、あの総会屋への利益供与事件が解ったのである。<P> 只、何故第一勧業銀行の元会長らが自殺を選んだのかは掲載されていた遺書からは読み解くことができなかった。それでも、自殺した元会長らの考えていたことを予測しながらこの本を読めば、あの総会屋への利益供与事件の全てが解ると思う。
今回の事件で被疑者となった民間側に共通するもの。<BR>それは「社会通念の範囲」と認識していたことだ。<BR>もちろん許されることではないだろうが、昨日まで見逃されてきたことが突然犯罪と言われることへの戸惑いが伝わってくる。<P>検察や警察が第一勧銀を突破口にしたが、検察が目指したものは何だったのか気になるところである。<P>さらに、大蔵というターゲットははじめから想定していたのか興味を引かれるところだ。<P>被疑者の多くは、前任者から引き継がれた者たちだ。<BR>そして自殺者の多さに驚く。彼らが守りたかったものは何なのか。<BR>仲間か、組織か、プライドか・・・<BR>この領域への切り込みは社会部記者の真骨頂であり、本書の価値を築いていると思う。<P>いまも、反社会勢力や権力を握る者かァ?の不当要求に、戦っている人たちがいる。<BR>司法は、勇気を持って戦う彼らを、真剣に守り続けてほしいものである。
とかく日本のジャーナリズム(特に新聞)は経済オンチという批判をうけることが多いが、この本は社会部という経済については本職として取り組んでいない組織が書いたものだけに経済の素人にもわかりやすくなっている。しかも問題の掘り下げ方にまったくためらいがないのがいい。この事件を扱った本はいろいろあるがほとんど実名で何が起こったかを解説しているのはこれしかない。総会屋対策を担当している総務部の方にもいい教訓を提供できる本だと思う。