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三億円事件 ( 一橋 文哉 )

1968年に起きた三億円事件は、40歳以上の人ならほぼ覚えているだろう。当時8才だった私にも、それは衝撃的な事件であった。ちなみに当時の3億円は、今の20億円くらいに相当するそうである。それほどの大金が、たった一人の偽白バイ警官に盗まれてしまい、多くの目撃者や遺留品があったにもかかわらず、時効は成立する。<BR>この事件の真相を、事件が起きてからちょうど30年後の1998年から、著者が再び追うのであるが、その過程は緊迫感があっておもしろい。また、当時の捜査上のまずかった点なども明らかになってくる。かなり真相に近づくのであるが、やはり30年という年月は、長かったと言わざるを得ない。民事的にも時効が成立しているのだから、犯人にはことの顛末を明らかにして欲しいものである。私のカンからすると、多少の脚色があるにせよ、ここに書かれていることは事実だと思われる。

グリコ事件に引き続き、よくここまで取材したものだと驚嘆する。<BR>三億円事件の決定版だろうか?<BR>動機に、暗い怨念めいたものがあることに慄然とする。

クールなノンフィクションかと思いきや、だんだん小説めいてくる。<BR>でも事件当時の資料、関係者のインタビューなどが精緻で重厚なので飽きない。だから信憑性云々より作品として楽しめると思う。

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