5部作の一冊目である本書。<BR>ベースとなっている山本周五郎賞受賞作の「家族狩り」の方は読んでいないので比べられませんが、<BR>どうやら期待できそうです。<BR>いくつかの話が交互に出てくるので、途切れ途切れに読む場合は<BR>気をつけてないと誰が何やら分からなくなるので注意を。<BR>一巻ということもあり、「すごくよかった!」ということはありませんが、<P>月一冊の刊行をとても楽しみにさせてくれるものでした。
大改定を加え、五部作としてリメイクされることとなった作品。その第一部。作者の丁寧で静かな決意に満ちたあとがきから、この作品にかける思いの大きさがうかがわれる。95年度版では、残虐なシーンが畳み掛けるように繰り出されるところがあったが、本作では抑制されたトーンで、かえって緊張感が増している。<P> キャラクターも、95年度版より更に存在感が増し、行動の一つ一つに内面からの必然性を感じる。<P> 時代は十年でますます変わった。耳を疑い眉をひそめる事件も、小説を凌駕するように凶悪化・深刻化している。そんな中で、天童が自らの題材を再び世に送り出すにあたり、最大限の力を注ごうとした姿は、誠実だといえよう。似たようなモチーフでキャラクター名を変え、「家族狩りⅡ」とでもすれば、さしずめ次の直木賞の有力候補になっただろうに。新作が文庫本書き下ろしとは、驚いた。<BR> 第一巻を読む限り、天童の小説世界は確実に深化している。
本作品は、95年11月に発刊され山本周五郎賞を受賞した「家族狩り」の文庫化にあたり、作者が全面的に書き下ろした新作である(家族狩りの文章を1行も使っていない!)。本作の第1部を皮切りに、全5作が毎月発刊される。<BR> 残虐な方法で夫婦が殺害され、その子供が自殺体で発見されるという事件が相次いでおこる。子供たちは事件前から家庭内暴力を起こしておりその果てに起きた事件として処理されるが、事件現場に立ち会った警部補・馬見原は、その結論に疑問を抱く・・・。一方、作品に登場する主要な登場人物それぞれが「家庭・家族」にトラブル・トラウマを持っており、第1部では主に馬見原の事情が描かれる。<BR> 「家族の崩壊」と「そのしわ寄せに苦しむ弱者・子供」という本作品のテーマは、99年の大ベストセラー「永遠の仔」に通じるテーマである。「家族狩り」が発刊された95年当時と比べて家族を取り巻く状況は悪化し、様々な事件が現実に多発している。これらの社会情勢の変化にあわせ、作者がどの様なメッセージを私達に与えてくれるのだろうか?<BR> いずれにせよ、発刊を待ち焦がれただけあり、一気に読了させてもらった。期待に違わぬ出来で、ミステリーファンならずとも絶対買いである。一方、第2部まで1ヶ月も待たなくてはならないというのは拷問に等しい。あなたは毎月読みますか?それともまとめて読みますか?<BR>本シリーズは2004年の出版界最大のニュースとなるであろう。