ブッシュはどう考えても間違っている。それに速攻「支持します」なんて言ったどこかの首相も。こういう話題って、ウザイ?でも、それって逃げだよね。<P> この第2巻には、私たちが目をそらして懸命に気づかない振りをしていることがらが、揺り起こされている。人物造型が深く掘り下げられ、95年版より共感しやすくなった。95年版を読んで結末を知る読者にも読み浸らせる力がある。役者もそろってきて、次の巻が楽しみだ。<P> 内戦下で懸命に生きる少年少女たち、そしてこの日本で学歴や差別や誘惑と戦い続けている少年少女たちに、私も祈りをささげたい。<BR> 巻末の作者あとがきが、今回も心にしみる。馬見原には、そんな思いがしみついていたのか。
待望の二冊目。寝食を忘れて貪り読む。全5冊が刊行された時点で一気に全巻読みたい衝動に駆られる。週間漫画雑誌を読んでいた頃が懐かしい。発売日になると学校帰りに本屋へ馳せ参じたものだ。第2部では、ひたひたと恐ろしい暴力の影が忍び寄る中、ある登場人物は思考の視野を広げる。だからといって解決策が見つかるわけでもなく、思索は続く。登場人物たちの行動や悩みを通じて、それらに添わせるようにぼくの心を静かに沈める。ぼくも彼らのように「答え」を導き出すことはできない。でも傍観者の位置から踏み出して、もっと登場人物たちにコミットしていきたい、という欲求は募るのだ。今から甘えたことを言うかも知れない。小説世界の中とはいえども、それに対して正面から向き合うことによって、何かが生まれ、何かが始まると信じたい。
待って良かった。待たされて読んだ。だからこそ、面白い。面白いと一言で言う作ではないかもしれない。作家の追求しているのは面白さもあるだろうが、メインテーマは「家族」なのだろうから。<P> 第一部「幻世の祈り」で壮絶な現場を目撃した馬見原刑事。その麻生家の息子である麻生達也の遺書らしきものが見つかったところで第一部終了。第二部「遭難者の夢」ではその事件が扱われていく。捜査員全員が達也犯人説を信じて疑わない中、馬見原一人だけそうでないという固定観念にも似た意見を主張する。それを言うように、不信な電話が。<P> やはり事件そのものに焦点が集まる。家族を殺し自分も自殺(現段階で)というのは去年11月の大阪の事件をリフレインさせる。男子大学生が家族を殺傷。その恋人の女子高校生も家族を殺す計画を持っており、最後は自殺しようとしていた。かなり本作の設定と似ているし、大阪の事件に思い入れが強い自分にしてはこの家族狩りという小説にも似たような思いがある。しかしこの場合似たような事件の3件目ということから、ややとらえ方が違うかもしれないが。<P> テーマはやはり家族。それを追求しているのは浚介の高校の生徒でもある芳沢亜衣の心理描写だろう。彼女も自暴自棄になっていた。自分が今周りの出来事をどう思い、受け入れ、何をすべきかなどの心の葛藤の様子が鮮明に描かれている。そして本書は巣藤浚介の過去にも触れている。浚介も、今何をすべきかが分からない人間なのかもしれない。敢えて家族を作ろうとしていない浚介に、共感できないこともない。しかし、2人ともただ逃げているだけなのだろう。<P> 新たに油井善博という人物も登場する。馬見原に逮捕され、釈放された油井は馬見原をひどく憎んでいる。この油井という男に注目が集まる。そして、馬見原がそれに連ねて関わっていた一人の女性、冬島綾女の過去と今も終盤描かれている。ラストは、またもや壮絶なシーンで幕を第二部終了。<P> 多くの人間が一つの事件に絡んでくる。それは悲劇でしかないのか。しかし、悲劇から生まれるものを、どうにかプラス作用させる必要もあるのだろう。単行本版を読んでいない自分にとって今後どうなっていくか楽しみである。