大変哀愁漂う本だ。一つの時代の終わりの哀しさが、新しい時代の始まりの明るさに勝っている。もろんこれは読み手の感じ方によるだろうが。<P> パリから貴族の夫人が帰国、そこにあるのは往時の勢いを失った家だった。また時代は変わり、世の中は動き。そのことに上手く対応できない貴族家庭の没落と対応している新興ブルジョアの登場を、多くはない登場人物の言動から巧みに描いている。チェーホフ自身は、そこが喜劇だといっている。<P> チェーホフという作家は、一見なんでもない短い話の中に多くのことを盛り込む事のできる素晴らしい作家だと思う。「桜の園」は彼の作品のなかでも一段と強い光をはなっている。この戯曲のなかにあるのは一つの時代が終わる哀しさだ。離れたくはない、しかし前に進!なければならない。かつて私が大学を卒業するときに感じた心情を、この小説の後半で登場人物が代弁しているかのように感じて夢中で読んだ。<BR> 人生においてこの本のよさを切実に感じる事のできる時期が,必ずあると思う。文学作品を自分の人生になぞらえて読むのは,間違った読み方なのかどうかはわからないけれども。
桜の園について。<BR>ロシアの貴族階級の終焉を読むことができる。<BR>この本を読むことによって<BR>20世紀はじめのロシアの事情について興味を持った。<P>そしてこの本の良い所は以下の点であったと思う。<BR>最初外国文学を読もうと志した人にとって最大の壁は<BR>翻訳の問題であると思う。<BR>もし翻訳家が下手に日本語訳をしていたら<P>いくら良い作品でも駄作になってしまう。<BR>ところがこの作品はとても翻訳がうまい。<BR>とても美しい文学になっている。<BR>やはり文学は文章が美しくなくてはならないと改めて思った。<P>桜の園を読んで、実際に舞台を見たいと思った。(桜の園は戯曲です。)