ローマ人の物語〈7〉― 悪名高き皇帝たち みんなこんな本を読んできた ローマ人の物語〈7〉― 悪名高き皇帝たち
 
 
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ローマ人の物語〈7〉― 悪名高き皇帝たち ( 塩野 七生 )

晩年孤島に隠棲し恐怖政治を行いながら放埓な生活を送ったといわれる第二代皇帝ティベリウス、歴代皇帝の中でも暴君として随一の知名度を誇るネロ(第五代)とカリグラ(第三代)、口下手でなりゆきまかせの性質があり、若い奔放な前妻にふりまわされ後妻(ネロの母)に毒殺されたクラウディウス(第四代)の4人の“悪名高い”皇帝の治世を描く。<P>目だった業績がないといわれ、むしろ悪く描かれることが少なくないティベリウスとクラウディウス、後世にその性癖や行動がスキャンダラスで畸形的に描かれるカリグラとネロ、本書で著者はこれらの皇帝たちの再評価を試みている。特にティベリウスについては晩年のカプリ島隠棲後の悪評は根拠がないと喝破し、カエサル、アウグストゥスの後を継ぎ、帝国の礎を築き覇権を軌道に乗せたという点でその内政・軍事・外交といった面での手腕を高く評価する。<P>著者の文章は、彼らの治世を様様な要素、政策とその結果、影響、外部環境、とひとつひとつ事細かに解きほぐしていく。後世の偏見や一面的な見方に惑わされず、複眼的な視点を忘れないその姿勢、論理的な筆の運びは見事としかいいようがない。史書を読み解き、推論し、平明な言葉でつづっていく。決して筆を急がず、かといって単調な一本調子でもない文章は読みにくさとも無縁。<BR>この巻においても著者は、後の五賢帝時代の歴史家タキトゥスを高く評価し、彼の著作から引用するところが少なくないのだが、タキトゥスと見解を異にする部分などはきちんとその論拠を明らかにしていく。千有余年の時を超えての二人の対話を見ているよう。全巻にわたってこうした知的冒険のワクワク感に満ちており、飽きさせない。見事。

この「悪名高き皇帝たち」というタイトル、なぜ「悪名高き」かというところに注目していただければ……<BR>その一つが一般的なイメージとしての「キリスト教の迫害」というところにもあるように思われるんですね。<BR>特にネロは。<P>もう一つくらいをあげるならば「ローマ市民への抑圧」というもっともな理由もあるのですが、<P>その「抑圧の理由」まで書かれた高校の歴史教科書はほとんどありません。<BR>キリスト教の迫害に関しても、少なくとも教科書では「ネロはキリスト教徒を迫害した」と書かれているだけで、<BR>それからは参考書頼りなのです。<BR>ティベリウスに至っては名前すら出ていません。<P>私個人の視点としては、ローマ崩壊の理由は「現実を見ないキリスト教」にあると思っています。<BR>それはキ!!!スト教に浸かっていったヨーロッパ諸国の興亡が示していると思いますが。<BR>当然キリスト教の視点で見れば、ネロほど悪人はいません。ディオクレティアヌスも同様ですね。<P>しかし本来は歴史とは客観で見られるべきものなのです。それも、宗教という色眼鏡を外した状態で。<BR>そして裸眼で見れば、悪人とは思えない姿がのぞかれるのかもしれないのです。<P>その上塩野さんは、人物の「悪い雰囲気」を表現しながらも「輝いていた一面」もご存知です。<P>カリグラやネロの変化は、初期の政治を見た上で総合的に見られるべきなのですから。<BR>隠遁生活をカプアで過ごしたティベリウスも、「隠遁」の事実と並列して置かれた「政治の成果」を見れば「悪名高き皇帝」でもないのがよくわかりますよ。<BR>政府はつねに官僚!!!しでは成り立たないように、武家屋敷は瓦無しでは成り立たないように、<P>ローマは「悪名高き皇帝」なしでは成り立たなかったのですよ。

 著者はユーリウス・クラウディウス朝のローマ史を書くには余り適任ではないのかも知れません。   特に目新しい知見を求めているわけではありませんが、平凡な記述といい、イタリア訛りのラテン語表記といい、彼女の作品の中では、やや見劣りする本です---処女作『ルネサンスの女たち』が一番出来がよいと感じるのは私だけでしょうか---。<P>おそらく著者は古代ギリシア語もラテン語も十分に読みこなせないのではないのではないか、と感じさせられました。    とはいえ、塩野氏独特の思考法のあとは見て取れるので、決して世に多く出回っている「劣悪」にして「平俗」な図書とは異なります。念のため。

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