重いテーマを軽快な会話と文体で読ませていく筆者はうまい。<BR>悪ふざけの一歩手前で踏みとどまる見極めもついていると思う。<BR>女性としては、春の主張が心に響く。すべてに賛成するわけではないが、こういうことをきちんと<BR>考えている筆者に好感が持てる。<BR>この父子3人に母親を加えた家族のあり方が素晴らしく辛い設定とストーリーを爽快に締めている。
久しぶりに小説を読んだ気がしました。ミステリーを読んだというよりは、村上春樹の小説を読んだような爽やかな印象を味わったというのが実感です。「なかなか小説も捨てがたい」と言われた批評がわかる気がして、どうしてかな?と思われたのは、通常ミステリーや探偵ものはどうしても説明的に状況や推理を読者に対し気づかせる必要があるのに対し、この小説は巧妙に説明的な解説を叙情的な会話や情景描写に隠して暗示的に読者の脳裏にインサートしているからに他なりません。無理して再読しながら分析しなくても、印象として全体像が読めるという解説的でない心象的解決を読後感として持たせることに十分成功していると思います。こういう寓話的でカラーを感じさせる小説空間に久しぶりにに出会い、最後の場面で私事ですが父の葬儀の時に感じた「父親への男としての熱き想い」を思い出しました。 Good!
お奨めされたこともあり、手にとった。するりと読めたのは良いが。ややネタは弱い(個人的に途中でネタばれしてた)。独り言が多い語り口は、ハードボイルドっぽいって言うことなのかもしれぬが、工夫の余地ありか。雑学ネタも意外性に欠ける。とここまで書くと大したことないと思われる方もおられるかとは思うが、面白く読ませていただいた旨、お断りさせていただく。