武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新 みんなこんな本を読んできた 武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新
 
 
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武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新 ( 磯田 道史 )

 武士のありのままの生活が理解できる傑作。没落する人、上昇する人の決め手が一般にも分かりやすい文体で書かれている。質実剛健にならざるを得ない中、見えを張らねばならないところで見えを張る。不況の時代に、今も昔も、人は変わらないのだなあ、と思う。

加賀藩主の「プリンター兼計算機」として勤めてきた一族の生活史。明治維新前後の動乱期をどう乗り越えていったのかは現代に通じるものがあります。キモノやお料理のことなど、加賀文化の一面も知ることができて興味深かった。

加賀藩においてプロの会計士として立身出世していった猪山家歴代の物語。<BR>当時の武士階級においては「賤業」的な"bean counter"(御算用者)であった猪山家が、算術一つで幕末の激動期を生きた姿を等身大に描き出している。大変に面白い。<P>本書は同一族を未刊行史料に基づいて淡々と記述しており、随所に知的好奇心を掻き立てられる記述が見られる。読者の興味の居場所によって、読後感は大きく変わってくるのではないだろうか?。私個人としては「どこの世界でも教育は大事」という認識を新たにするとともに、当時の武士の日常生活および価値観が垣間見られた点を高く評価したい。

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武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新&nbsp;&nbsp;&nbsp;東京・九段の靖国神社に立つ「大村益次郎」像の建立に力があったのは、加賀前田家の「猪山成之(しげゆき)」という一介のソロバン侍だった。幕末の天才軍略家と一藩の会計係の間に、どのような接点があったのか。「百姓」から軍略の才一つで新政府の兵部大輔に上りつめた大村と、ソロバン一つで下級武士から150石取りの上士にまで出世した成之の出会いは、いかにも明治維新を象徴する出来事だが、著者は偶然発見した「金沢藩猪山家文書」から、その背景をみごとに読み解いている。 <p>&nbsp;&nbsp;&nbsp;猪山家は代々、金沢藩の経理業務にたずさわる「御算用家」だった。能力がなくても先祖の威光で身分と報禄を保証される直参の上士と違い、「およそ武士からぬ技術」のソロバンで奉公する猪山家は陪臣身分で報禄も低かった。5代目市進が前田家の御算用者に採用されて直参となるが、それでも報禄は「切米40俵」に過ぎなかった。しかし、120万石の大藩ともなると、武士のドンブリ勘定で経営できるものではない。猪山家が歴代かけて磨きあげた「筆算」技術は藩経営の中核に地歩を占めていく。 <p>&nbsp;&nbsp;&nbsp;本書のタイトル「武士の家計簿」とは、6代綏之(やすゆき)から9代成之(しげゆき)までの4代にわたる出納帳のことである。日常の収支から冠婚葬祭の費用までを詳細に記録したものだが、ただの家計の書ではない。猪山家がそれと知らずに残したこの記録は、農工商の上に立つ武士の貧困と、能力が身分を凌駕していった幕末の実相を鮮明に見せてくれる。220ページ足らずとはいえ、壮大な歴史書である。(伊藤延司)
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