現在、大学に限らず初等教育などでもフィールド研究、体験学習などの導入が盛んだ。川喜多二郎がKJ法にたどり着いた背景に、彼のいう『野外科学』における調査、研究手法が確立していない点を挙げている。まさにそれは今教育業界で盛んに行われている体験的学習と同様のものであろう。今年度より総合的な学習の時間などが導入され多くの学校、先生が困っているという。KJ法がそれを解決するとは言えないが、川喜多氏が人文学の調査、研究、まさに野外から『感じる』ことから学問を始める手法としてKJ法を編み出したのであればそのプロセスや手法に何を考えていたかを、今のフィールド研究、体験学習指向の学習に応用できないか、と。そんな読み方も読める本だ。
学生時代に卒業研究を行っている先輩が、研究のまとめの新しい手法として使っていて、教えてもらったのが最初の出会いで、この本を手にした。以来、新入社員研修や仕事上での問題要因分析など、多くの場面で用いてきた。問題解決技法の典型的なものとして、情報処理技術者のテキストなどにも概略が載っている。<P>今また仕事の関係で使うことになり、もう一度原理原則に戻ってみようと思い、KJ法がコンパクトにまとめられた、この本を手にとってみた。KJ法が誤った形で使われないために、著者がていねいに説明されていることを、再認識した。<P> Ⅰ 野外科学-現場の科学 Ⅱ 野外科学の方法と条件 Ⅲ 発想をうながすKJ法 Ⅳ 創造体験と自己変革<P> Ⅴ KJ法の応用とその効果 Ⅵ むすび<P>の章構成になっている。後半部やむすびで示されている、著者の創造性に対する見解は、まったく古さを感じさせない。研究者として油ののった時期の意見は、力強さを感じさせ、創造へ立ち向かっていく者を勇気付けてくれる。<P>逆説的に言えば、こと創造性の分野に関しては、この国は余り進歩していないとも言えるのだろうか。