ここに取り上げられている様々な心理学的実験はどれも興味深く、その結果は今まで抱いてきた人間観に大きな疑問を投げかけるものである。そして、それは心理学の領域を超え、哲学や法律、政治と言った分野にまで再構築を迫ってくる。「自由な選択を許された責任ある個人」などと言うものは幻想に過ぎず、自発的意志に基づいた「結婚しない」、「子供を作らない」と言った行為も、自然の摂理に則っているだけかもしれないのである。新たな人間観を構築し、それに基づいた制度や思想を模索していくべき時になったのかもしれないとの思いを抱いた次第である。
人は誰でも自分の中の感情や行動を大なり小なりコントロールしていると思ってるはず。この本はその確信的な信念を覆すような研究結果を紹介し、さらに納得のいく説明をしてくれています。<P>ある感情が内に湧きあがる時、それは単なる衝動であり、感情として色付けするために、環境によって適切な原因づけをしている。そのような事実を結果と共に突きつけられたら、とまどいを覚えない人はいないのではないでしょうか。<P>この本では、そのような人間の心理を掘り下げ、「潜在知覚」をキーワードに現代の人間観に迫り、さらに疑問を投げかけています。非常に魅力的で読み応えがあります!
面白い!! 最高!! 知的に興奮できる本なので誰にでもお勧めしますが、とりわけ、大学で心理学を学んでいて(あるいは、かつて心理学を学んでいて)、でも「どうも心理学ってパッとしないな」と思っている人にお勧めします。心理学以外の面白い本を読んで、それはそれなりに楽しんでいるけれども、「どうして心理学にはこんな面白い本がないんだろう。やっぱり心理学ってダメなのかな」と思っているあなた!! 心理学者を名乗る人物の書いた(そして、心理学的内容にあふれた)こんな面白い本があります!! 心理学分野で、こんなに面白い本を読んだことがない!! (久々に心が晴れました。)<P> 著者は知覚心理学の専門家。タイトルを見て、「サブリミナル効果」について書かれた本かと思う人もいると思いますが、違います(サブリミナル効果についても書いてありますが)。本書のメインメッセージは、「人間は思っているほど、自分の心の動きをわかってはいない」というもの。何が面白いかって、常識的な人間観が崩されていくところが面白い。外界からの刺激を認識し、順番に処理し、本人の「意図」に則って、意識的に行動を決定する、という常識的な人間観が、認知心理学、知覚心理学、神経心理学、社会心理学、あるいは心理学の関連分野で行われた多くの実験結果と食い違っていることが示されます。むしろそれらは、人間の多くの行動や意識内容が、意識されない潜在的な認知過程によって、決定されていたり影響を受けていることを示しています。<P> 本書は、大学の「心理学概論」の授業の内容を一冊にまとめたものです。文章は、まるで授業を聞いているようで、ちょっとわからなくなりそうなところに「まとめ」があって、理解を助けてくれます。本の内容は心理学書としては異例に過激なのに、文章はとても読みやすい。非常に読みやすさに配慮されている本だと思います。<P> ガツンと一発ぶん殴ってくれる心理学書が一冊ここにあります。