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| 月をめざした二人の科学者―アポロとスプートニクの軌跡
(
的川 泰宣
)
シングルマザーに育てられ、スターリン政権下の粛清の嵐に巻き込まれた苦労人。かたや、幸せな家庭に育った貴族のお坊ちゃま。ソビエトが崩壊する90年代まで名前が明かされることのなかったコロリョフ謎の多い人物だったが、フォン・ブラウンは華やかな表舞台に立ち、国際的な評価も高かった。二人は互いに顔をあわせることはなかったものの、ロケット研究と宇宙への思いはどこかリンクしていた。対照的な生き方をした二人と宇宙開発の過程を知るためのわかりやすい入門書であると思う。(コロリョフについてもっと興味があるという向きには、ジェイムズ・ハートフォードの本がいいと思います)
月をめざした二人の科学者―アポロとスプートニクの軌跡
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| 人類が実現した最も壮大な夢、アポロ計画。月に人間を上陸させることは、冷戦期の米ソの威信をかけた闘いであり、莫大な金と人が注ぎ込まれた。あまり知られていないことだが、2大強国にはそれぞれ中心的な役割を果たした科学者がいた。アメリカのフォン・ブラウンとソ連のコロリョフである。2人のどちらかが欠けていても、米ソの宇宙開発はずいぶんと違うものになっていただろう。本書は、人類を月に送り込むという空前の開発レースを、幼いころからの夢を追い続けた「史上最強のライヴァル」の名勝負としてつづったノンフィクションである。 <p> フォン・ブラウンもコロリョフも1930年代のロケットブームの影響を受けた世代だった。会ったことこそなかったが、運命の糸は劇的に交錯している。ドイツ生まれのフォン・ブラウンはV2ロケットの開発に携わり、その技術をアメリカで発展させる。歴史の転換点となったドイツ脱出劇は実にスリリングだ。一方、コロリョフはドイツから持ちかえったV2を徹底して研究し、初の人工衛星打ち上げと有人宇宙飛行を成功させた。コロリョフのチームには、かつてのフォン・ブラウンの同僚も参加している。 <p> けっきょく、偉業を達成したのはフォン・ブラウンだけだったが、政治、軍事、技術的困難に決して屈することのなかった2人をめぐるドラマは、表舞台の宇宙開発同様、ダイナミックで魅力的である。著者は宇宙の専門家だが、とても読みやすく、エンターテイメント小説顔負けのおもしろさである。(齋藤聡海) |
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