「作家夫人の山荘暮らし日記」というと、花だの月だの悠長な話かいなと思うが、そしてその通りといえばその通りなのだが、武田百合子という人の目を通すと、予想を裏切る、なんともエキサイティングな日々の暮らし! 「死にかけた野鳥の雛を踏み殺してやる」野性の優しさが私は好きだ。何度読み返しても飽きない。心が落ち着く本。
この本は、雑誌クーネルで知り、購入しました。まだ、主婦専業が健在(?)だった頃の、しかも作家の妻の生活記録帳です。買い物や料理、パン作り、園芸、等々。献立から物の値段まで細かくメモされ、当時の手作りの暮らしが綴られています。そんな遠い日の出来事が記されたこの日記本を読んで懐かしい気はしましたが、やっぱり、あまりにも個人的な生活日記。気分転換にこんな一冊もよいかもしれませんが、個人的過ぎて退屈な人もいるかもしれません。
毎日、少しづつ、日課のように読み進めた。<BR>天気が良い日、いいことがあった日、ちょっと気落ちする日。<P>富士日記の百合子さんにも山の天気のように、日々の事件は起こるのだけれど、持ち前の明るさや、強さで、毎日を少女のような清冽さで乗り切っていくのだ。毎日かかれる、朝、昼、夕の献立も、それが血となり肉となる滋味にあふれていて、その日、一日を丁寧に生きることの大切さが分かった気がした。