一見少し内容が難しいのですが、読んでいくと家族の大切さを改めて感じました。一歩の勇気を踏み出すヒントがありました。
私がこの本に出会ったのは、わずか13才の時。精神科に看護婦として勤める母が愛読していた事で、タイトルのインパクトから好奇心をくすぐられて読んだのが最初だった。13才の私にはどう読んでも「死」への恐怖が強調されているようで(怖かった…)と印象に残っていた。そして今、32才になり、友人・我が子を見送り、いずれは母・そして私にも必ず訪れる「死ぬ瞬間」をいかに迎えるのか?そのために日々をどう生きて行くのか?皆が恐れてやまない「死への恐怖」のメカニズムを、精神科医である著者が見事に解き明かしてくれている。13才のあの時、読んでいて良かったとも思える。トピックが「死」であるからといって、子供には…などど思わず、直面する現実を親子で考える時間のきっかけにさえなる。良書とはこういうものであり、これはそう呼ぶに相応しい1冊だと確信する。
著者はスイス生まれの心理学者。アメリカへ渡り、200人の末期ガン患者に直接面談し、彼らが死にいたるまでに、「否認と孤立」「怒り」「取り引き」「抑鬱」「受容」の5段階の心の動きがあることを発見した。何人も死を恐れているのだが、なかんずく、「病気を治療する」ことのみを教育された医者そのものが死を直視しようとせず、治る見込みのなくなった患者をいかに孤独のうちに死に追いやっているかを鋭く指摘する。尊厳死とかホスピスの出発点となった本であり、それらの著作のある日本の山崎章郎氏や柳田邦男氏にも大きな影響を与えた。レイチェル・カーソンの「沈黙の春」が環境保護運動の出発点となったように、この本は尊厳死の古典となるにちがいない。