東条英機に面と向かって総理辞めろといったという、昭和の異端児石原莞爾の講演録。<P>世界の戦争を歴史的に分析するところから始まって、最終的に世界が一つになるという彼独自のものと思われる思想を展開する。<P>その理論上に太平洋戦争をおいており、太平洋戦争自体の善悪はまた別の問題として、世界戦争が今後短時間に決着が着く戦争になり、その後大量殺人兵器(核という形で実現したが)が開発され、その驚異によって超大国による一極支配が到来し、世界平和が到来するというかれの理論は、是非はまた別として、すばらしい洞察力であると思う。<P>ただ、その一極支配をもたらすべき核があまりに強い力を持つために世界に冷戦を招いたことや、また、兵器としても実効力は大きくなく、そのような象徴的兵器の為に、テロリズムという形態で新しい長期戦が到来する事まではさすがの彼にもできなかったようである。<P>しかし、戦争史を知るのにも適しているようにも思えるし、必読とまではいわないが薄いし読みやすいので読む価値はあると思う。
次回の大戦で、究極の戦争が終ろうとしている。それも半端ではない。地球の人口は半分になるかもしれない。世界も統一するといっている。そこに日本はいる。否、日本は苦労して、真剣に戦わねばならない。敵を恨むとか侮辱するとかを超え、敵に十分敬意を持って、正々堂々と闘わねばならない。これを「世界最終戦争」とするために。<P>石原莞爾。彼は生粋の帝国軍人であるが、ミリタリストではない。恐らくその対極に位置している。彼の世界観は、じつは「武」ではなく、日本人の謙譲の徳や、慎みの姿勢、そして天皇や八紘一宇という建国の御精神の本来意味する所に、一番の大切な核がある。国力が増進すれば、とくに日本民族にはいっそうの慎みをと戒めているのである。危険思想といわれるかもしれないが彼を信頼したいのは彼の姿勢である。彼は、日本の「良さ」と「使命」を、敗戦後もずっと信じて捨てることはなかった。つまり、「空気」で軍国主義やその逆を演じるようなやわな人物ではなかった。彼は、実際日本国土の数倍に匹敵する満州を僅かな兵力で乗っ取る頭脳があった。人の観ない点で物事を見ることができた。ある目的を遂行してからは、満州を返すといっていた。そして、余りにも早く到来してしまった大東亜戦争に、反対した。この桁はずれた計算力が、慄然とするのである。<P>この種の鬼才は滅多に出現しない。戦後の極東裁判にも自ら出廷を請う男である。この種の「永遠平和論」は、今の日本人には絶対に想起できない。天皇を戦犯にしようと言う人すらいる状況である。不謹慎かもしれないと思いつつも、私はこの男に魅了される者はいていいと思う。<P>因みに、まったく受付けないというなら別だが、彼の予言を後知恵で批判するのは、正しくない。彼こそは、決戦兵器や軍事情勢の未来筋を、当時予言して当てた、恐らく世界でただ一人の人物である。帝国陸軍が誇る、最高の知能。
昭和15年当時、石原莞爾が世界についてどう考えていたか、どうなっていくと予測していたかを記した本。読みやすいし、理解もしやすい。<P>しかしそれこそが危険だと思ったりもします。世界はそんなに単純に割り切れないし、石原の予想通りに世界はうごかなかったよ、と。だから口あたりのいい未来論なんか、100%信じちゃいけない。<P>でもひとつのビジョンを示しているのは事実、きっと魅力的な軍人だったんでしょうね。