民法Ⅰはどちらかというと初学者向けであるという印象を受けたが、こちらは、一転してある程度民法を習得した人向けであると感じた。<BR>債権法の難解さもあり、全体的に難易度は高い目であると思われる。<P>ただ、パンデクテン体系を崩して、債権各論を2番目にもってきた辺りは、内田先生の教育的な配慮の大きさが伺える。<P>そういう意味で、民法Ⅰで学んだ人には是非こちらも読んでいただきたい。<BR>民法の奥の深さを感じさせてくれる一冊であると思う。<BR>(特に不法行為の分野は必読である)
この本は、民法学を非常に分かりやすく、たくさんの人に広めたという点では大変、貢献をした本である。横書きという、出版当時としては、画期的な執筆方法もなされているし、図や色においてもたくさんの工夫が見られる。<BR> しかしながら、何点かは、気をつけねばならない点もある。<P> まず、第一に、内田教授が採られている説の中には、学会の中では少数説であるものも多数存在することである。権威の学問といわれる、法律学において、内田教授の著書は既に、権威を得ていると考えられなくはないが、やはり少数説を、そのまま司法試験や、その他試験でそのまま使えるかどうか、という点では甚だ疑問である。<P> 第二に、この本は、あくまでも学術のために書かれている、という点である。それはつまり、典型的な事例などについては、細かく説明がなされているが、個々の事柄の細かい要件や、実務において必要となるであろう知識は、大変簡略化されて書かれている。<P> しかしながら、この本は、読んで損をする本ではない。それは、他のレビューで見られるように、多くの絶賛を受けていること、大変に、売れていることからも明らかである。
内田教授の、このシリーズが発刊されたときは<BR>学者の方が書く基本書といわれるような本も<BR>わかりやすい叙述がされるようになったものだと<BR>評判になった。<BR>しかしながら、これは特に本巻についていえることだが<BR>内容は学術書である。相当高度な議論も含まれている。<BR>さらに、著者の興味のある部分が厚く書かれる傾向がある。<P>とはいえ、この本が出版されたことにより、他の体系書も<BR>学習者の視点を重視する傾向が出てきたのは喜ばしいことで<BR>ある。その意味では、十分に価値がある本である。<BR>なお、上記の記述は本書の教科書としての側面に<BR>ついてのものであって、内田民法の体系書としての価値を<BR>否定するものではないことを付言しておく。