我妻民法、星野民法という過去の名著の次の名著が内田民法ではないでしょうか。なんといっても分かり易い。まず判例百選に出てくるような有名判例をベースに設例をして、解釈論を展開する。本流の方法論に則っている。解釈上の立場は概ね通説判例に従っているという温厚なものですが、盲従しているのではなく何故なのか論理的な理由、利益衡量上の理由をあげて説得的な論述を展開している。必ずや基本をマスターさせてくれるに十分な内容の本です。今年に入って(2002)から、家族法までの全分野がそろって体系を一貫して読むことができるようになった。著者は東大教授(大学院)で司法試験委員(止めたかも?)という学会のリーダーです。書かれた論文を見るところ専門は抵当権、契約あたりでしょうか。
この本の主なよい点<BR>①比較的平易な文章で書かれている<BR>②一般的な民法の教科書に比べ、コンパクトにまとまっている(しかし、少な いわけではない)<BR>③図解が多く、自分でいちいち事例についての図を書かなくても理解しやすい<BR>etc...<BR>次に悪いと思われる点<P>①条文順に(パンデクテン体系に沿って)必ずしも解説してあるわけではない ので、条文の位置を把握しにくい<BR>②初学者に配慮している割に、初学者には不要と思われる非常に高度な内容が 長々と書かれている部分がある<BR>etc...<P> しかし、悪いと思われる点②については、どの基本書にもいえる点であり、高度ではあるが詳しく解説してあるので他に比べればまだましではある。結論としてはゼロから民法を独学で学ぼうとする人にとってはややきつい。多くの人は挫折するだろうと思われる。民法を少しかじったくらいの人もしくは資格試験などの基本書には最適ではないだろうか。ゼロからやるなら、まず200ページ前後の本などを探されるとよいと思う。
この本ばかりではないが、最近出版される東京大学出版会の法律本は<BR>横組みのものが多い。<P>司法試験の論述解答用紙も「ヨコ」書きに変わって久しいが、横組みされた本を読むと何故か身構えてしまうのはどういった訳であろうか。<BR>さながら学術本ではなく、司法試験指導校に使われている様なテクストといった趣がある。<P>これは本書が国家試験等を受験するために、独学で学ぶための学習者の視点で著者が書かれているためであろう(横組みだと流し読みし難く、ついつい重要語句等にマーキングしてしまう)。<P>日本の民法はいわゆる「パンデクテン」方式を採用しており、その弊害についても論及されているのは本書のすばらしいところ。旧来型の「民法本」とは違い最先端の理論も用いられている。受験指導校で学ばれた方は分かる筈だが、受験指導校は民法を最初からパンデクテン方式で決して教えたりはしない(売買契約からまず初めに教えられる)。<P>しかし、本書の体裁はまさしくパンデクテン方式の民法に則っているわけだが・・・、それはあくまで、分類として従来通り編集しているからであろう。<P>本書を読むには、やはり独習者向けに書かれているとは言え、1044条にものぼる民法の一部分に過ぎないので、初学者には向かないものと思える。<P>現在の法学部には期待できないので、基礎を受験指導校、あるいは法科大学院で学んだ後、民法の全体像把握した上で、本書を始めとする内田民法シリーズを読み進めてみれば、そのすばらしさが判るはずである。