表題とは違い、かなり強気な本です。<P> 結果的には採用されていなくとも、自分が提案したアイデアには<P> 絶対の自信があり、コンペの回顧録に始まり、対戦相手の優れた<P> 所、コンペ主催者の思惑なども交えてながら、丁寧に敗戦理由と<P> そして自己の優位性を説明されています。<P> 職人気質というか、仕事にまっすぐな姿勢が節々に語られており、<P> 安藤氏の仕事に対する厳しい考えがビシビシ伝わります。<P> 過去との整合性、そして斬新であり、未来に人々の思いを<BR> <BR> 繋ぐ建造物とは、どのように生み出されるのか、プロアマを問わない<P> 語り口は、ボクシングの試合のような理屈じゃないものがあります。<P> 負けたことから、逃げない。<P> こういったところから、筆者の建築にかける情を感じてください。
自然は、手付かずのあるがままの状態が一番安定していて良いわけで、建築はそういった中にいわば相反するかのように建物という建築家の夢を具現化して植え付けていくようなもの。それを築くことで、以前そこにあった空間を単に埋め尽くしてしまうだけに留まるのではなく、それが存在することでまた新たな価値を持った空間を生み出すという、その領域の未来へと繋がる普遍的で広がりをもったモノでなければ建てる意味がない、と著書は言っているように感じる。<P>氏がコンペティションへ挑戦し続けている姿には、努力とか、負けることの美学などといった精神論や根性論をみてとるというよりは、何もないところに何かを具象化し存在させる、という建築家の血とでも言うべきモノについて述べているような印象を受ける。コンペという機会を通して、初めて生み出される設計案や模型という確かな存在物。その価値を十分に認めているからこそ、氏は挑戦し続けているのではないだろうか。<P>超一流の人物には専門分野とかそういった枠を飛び越えて伝わってくる何かがある。ぼくは建築にはまったくの素人だけれども、この本から多くの事を教えて頂いた。好著。文句無しにお勧めの一冊です。
言わずと知れた、安藤忠雄の建築論と思いきや…?<P>これぞ、元気の出る栄養ドリンクのようなエネルギッシュな読後感である。建築関係各位のみならず、広告業界関係者や営業担当者に、特にお勧め。敵陣に一人立ち向かう戦士のごとく、次々と設計コンペに挑む姿は、読む者に共感さえ思い起こさせる。安藤忠雄の「負けないゾ!」は、読者自身の「負けないゾ!」を喚起するかのようだ。<P>純粋な建築論をお望みの方々には、『建築を語る』に三歩譲るが、本書が大学で建築家を志す若者たちを対象にした<BR>講義録であることを鑑みると、さもあらんと納得がゆく。<BR>エールを送り、応援歌を高らかに歌い上げる。安藤忠雄の建築に寄せる情熱が直に伝わってくる好著である。