現在当たり前のようにわれわれは自分のことを日本国民と思っている。しかしそれは、明治という国家によって生み出されたものであることが、非常にわかりやすく書かれている。侍も百姓もいっせいに近代国家の国民になる。そのときの彼らの気持ちをのぞき見ることができるような本だ。
江戸時代と明治時代のイメージは180度違うのではないでしょうか?私のイメージでは江戸時代は羽織袴にちょんまげ、明治時代は洋服にハット。外見だけでなく産業や生活習慣まで180度違う国に感じます。だからこそ明治時代でなく明治国家という本のタイトルに十分納得できます。その明治国家がどのように誕生したのかが語り調でわかりやすく書かれています。
幕末維新の多くの人物をその小説の中で描いてきた著者が、その集大成とも言える形で語った明治国家論。勝海舟、坂本竜馬、大久保利通、西郷隆盛、小栗忠順、木戸孝允、福沢諭吉、西園寺公望、東郷平八郎、副島種臣、新島襄、中江兆民、徳川慶喜、などの明治国家を作った近代日本の「父」とでも言うべき人物が著者の愛情こもった言葉で語られていきます。幕末から明治と言う時代を語って実は、立派な日本論、日本人論になっています。<P>特にこの上巻で感じ入った部分は、江戸日本の無形遺産としての「多様性」を語った第三章です。藩制度と言う徹底的な地方分権社会が産み出した「多様性」が明治国家を支える基礎になったという捉え方は、私には初めてであったにもかかわらず、素直に私の心に入ってきまし!。今の東京一極集中による中央集権体制に対するアンチテーゼとも言えますね。