細かな説明は抜きます。なぜなら、それを知るには貴方がこの本を入手すれば良いだけの簡単な事なのですから。冨田氏は幼少時から多くの疑問符と好奇心を持って育ってこられた方です。昨今の子供達には珍しいくらいの手先の起用な子だったそうで、コンデンサーをバケツで作っちゃったりしたそうです。時には月を見るのに老眼鏡をバラして竹筒を使って望遠鏡を作ったとか…!。貴方はそういう好奇心を忘れてませんか?、そんな冨田氏の本です。子供の頃、感動したり友達と遊んであっという間に過ぎた時間。そういう感覚を思い出すかも・・・?。
著者は手塚治虫アニメの「ジャングル大帝」「リボンの騎士」やNHKの「新日本紀行」「新平家物語(大河ドラマ)」の主題歌作曲者であり、シンセサイザー演奏アルバム「月の光」「展覧会の絵」「惑星」でも知られる音楽家である。<P> 本書には自身の生い立ちから最近の仕事に至る音へのこだわりが、本人の書いた文章で語られる。音楽家の文章が分かりやすいとは限らないが、冨田勲は音楽だけでなく文章にも堪能だ。著者の音楽に対する考え方やトミタ・サウンドクラウドの公演の様子が迫力満点で伝わってくる。<P> 彼の足跡をたどり、私なりにいくつかの時代に分けてみた。テレビ・ラジオの草創期に綱渡りのように曲を書きまくった「テレビテーマ曲の時代」、モーグシンセサイザに賭けて新境地を開いた「船出の時代」、壮大な立体音場イベントを次々と成功させた「プロジェクトの時代」、オーケストラの奥深い魅力を再発見する「回帰の時代」。そして現在は過去の作品を家庭でも立体音場が聞けるようにDVDオーディオへリメイクしており、「集大成の時代」と言えるだろう。<P> ご本人は立体音響にご執心のようだが、私は彼のテーマソングが好きで、「回帰の時代」に東京交響楽団が演奏した「新日本紀行/冨田勲の音楽」のCDを聞くと懐かしさがこみ上げ、胸がジーンとする。<P> 「70年代我らの世界」をご存知だろうか。鈴木健二アナウンサーが司会をしていた月に一回の特集番組で、番組冒頭にアポロ宇宙船から撮影した(と思われる)地球が画面に出現し、少年少女合唱団が「♪青い地球は誰のもの」と歌い上げる。この主題歌も冨田勲が作曲したのもである。懐かしい……。<P> 「新日本紀行」もいい。井上ひさしは「いつだったか、夏の終わりの夜、山形の田舎家の縁先で枝豆を噛みながらこのテーマを聞いたときは、心の底からしみじみとなり、思わず涙がこぼれたものだ」と「ブラウン監獄の四季」で絶賛している。私も同感。
かれこれ30年以上の冨田サウンドのファンです。今まで雑誌や本にでてこなかった冨田サウンドの製作現場がこの本では明かされています。音に対する考え方には感動いたしました。新しいことに常に挑戦する冨田先生の人生観も良くわかります。音楽ファン以外でも先生の生き方を読むことで勉強になるのではないでしょうか。