世界のさまざまな事象をネットワーク的な思考法に結びつけて解説する。かなりこじつけた事例もあるが、目から鱗が落ちる例もあり。秩序とは偏りであり、べき法則が適用され、相転移としての臨界が存在する、と。この本を読んだから、直接仕事に役立つようなことはないが(ネットワーク社会ではノードたる個人がネットワークを左右することはできないから)、ものの考え方として知っておいても良いだろう(極めて多数のノードたる個人がものの考え方を変えればネットワークが変わるから)。
古代の人々は夜空を眺めて、その中に他の星とは動きの違う惑星を見つけました。それが記録され継承されるようになるには、何千年という時間がかかったのだと思います。そのあと、さらに何千年の時が流れ、その惑星の動きを説明するさまざまなモデルが登場し、最終的にはニュートンが引力の法則で鮮やかにその動きの意味を記述してくれたのだと思います。<P> 最終的な引力の法則を式で「知った」のは、高校生の頃でしょうか。そのときはそれで「わかった」ような気になっていました。しかし、それが導き出されるまでの歴史を考え、その1つの式が導き出されるまでの意味を本当に「わかった」という気になるまでに私は20年かかりました。<P> 「ネットワーク」について「知っている」ことはそれなりにありましたが、本書は、その断片的な知識をつなげて、前よりも一段「わかった」気にさせてくれるものでした。いまでこそ当たり前のように感じることも、先人が少しずつ知恵をため、後世に残してくれたことの結果なのだと思うと、感謝の気持ちがもてます。<P> 私の場合、理解したと感じるまでには、ある程度の時間とさまざまな角度からの説明が必要です。その中の説明のひとつがある日、一気に理解を深めてくれます。ネットワークについて書かれたさまざまな書籍の中で、本書はその役割を果たしてくれたと思います。冗長な部分や、多少強引な展開もありますが、それが私にとっては理解の助けになったと思います。<P> ただし、翻訳書の題名、体裁は、そのチャンスを私から遠ざけてしまいそうに思いました。原書を友人から紹介され、ネットで検索して見たときの表紙はとても魅力的に感じ、すぐに注文をしましたが、邦訳がでたと知って読むスピードを考えてそちらも購入しました。翻訳された題名と表紙の体裁が原書の雰囲気とは全く異なり、私には魅力的ではありません。多少軽めのノウハウ本のような印象ですね。とても惜しい気がします。
文句なく最高評点を与えられる(評者の基準はプロフィール述べてあります)本書は、インターネットから生命の進化まで、ありとあらゆる現象の背後にあるネットワークの原則を、順序立てて判りやすく説明している。随所に挟まれた、ネットワークの事例も理解を助けるのに役立つ。とくに、ビジネスパーソンにとっての意味合いにしぼると、第14章「ネットワーク経済」を読めば、90年代から起こった、「ニューエコノミー」というキーワードでくくられる種々のビジネス・プラクティス、たとえば、アウトソーシング、コーペティション、バイラル・マーケティング、等々の根底に流れる原則が理解できるはず。原則を理解した上で具体的なアクションを起こせば、より高いアチーブメントにつながるのは言うまでもないであろう。戦略立案などマクロのプランニングに携わる人とともに、企業変革などミクロのインプリメンテーションに従事している人にも読んで欲しい。ビジネスにおいて業務を推進するのためには、個々のスタッフ間のネットワークの理解(そして活用)抜きには実現できないのだから。