深井零は「雪風」のパイロット。フェアリィ星から地球に侵攻する異星体ジャムに対抗する空軍<FAF>に所属している。彼の部隊はジャムとの戦闘情報の収集する<特殊戦>。彼らは仲間を犠牲にしても帰還を至上命令とする。<BR>そして、深井零が信じるは、愛機「雪風」のみ。<P>こういった、孤独かつ非人間的な個性を持つ深井零と、物言わぬ戦闘機・雪風の物語です。<BR>人間と機械であるがゆえのジレンマ。<BR>深井零と他の人々との関係を通じて読者に訴えかける、人間性の意味。<BR>そして、ジャムという謎の存在が人類に及ぼすもの。<BR>これらすべてが巧妙に絡み合って、この終わりの見えぬ闘争に拍車がかかっていきます。<P>特筆すべきは緊迫感のある空戦シーンです。専門用語多用のため通じにくい部分が多いというハンデをものともせず、ぐいぐい引き込まれます。<P>一読の価値アリです。
私の得意分野ではないので、感じたことを箇条書きにして、レビューとさせてもらいます。<P>■未知の異星体「ジャム」と、地球防衛機構の主戦力・フェアリイ空軍との戦いがストーリーの中心であるが、ストーリー展開を楽しむより、人間性・非人間性について考えさせられる作品である。<BR><BR>■専門用語が多用されているが、それを理解出来なくとも、戦闘シーンでの緊迫感は十分伝わってくる。<BR>■この戦いの結末より、「ジャム」の正体が何なのか、知りたくなる。<BR>■しかし、続編を読みたいという強い衝動は湧き上がってこない。
パイロット用語(搭載機器の名称など)が随所に出てきているため、用語になじみの無い人には却って特殊な雰囲気を味合わせてくれるのではないかと思います。実際、この関係の仕事をしていない限り、本書に出てくる専門用語を使って毎日会話している人はほとんどいないと思う。<P>ただし、それほど頻繁に用語を羅列しているわけで無く、知識の無い人が読みづらいというほどマニアックな作品では決して無い。筆者自らも語るように、戦闘機の操作シーケンスが紹介されている航空マニュアルブックを元にして、操作手順が出てくるように話を書いたものである。<P> 肝心のドラマ性やメッセージに関しては、読者に考えさせるような文体になっており、やや簡潔すぎる感もあるが、それが帰ってシンプルで美しく、味わい深い。完成度が高いと評される所以であると思える。<BR> <P> 本書続編のグッドラックとは同一作品とは思えないほどの作品の雰囲気の違いが味わえる。本書は人間味を消すことで人間味を表し、続編は、正面から人間とは、機械とは、と、問題にとりあげていると言う面でより直接的な仕上がりとなっている。