これは歴史の一幕をつづった秀逸のドキュメンタリー。あたかも目の前でそれが起こっているようにリアルに戦争の悲惨さを伝えてくれる。この話が実話ということを忘れてはならない。こういった戦争ものは通常片方の視点から見たものになりがちだが、ソマリア側の取材も忘れていないところに、なぜこれを書いたか、という作者の思いが伝わってくる。<P>武装した暴徒に囲まれ、次々と仲間が殺されていく米軍のデルタフォースやレインジャー他、兵士の恐怖もさることながら、ソマリアの人々にとってもこの出来事がどんな意味をするのか考えさせられる。ソマリア側の死者数のほうが圧倒的に多いことを忘れてはならない。<P>文化の違う国への軍事介入の難しさを考えさせられる。大規模空爆を受けたコソボやアフガ!、そしてイラクとはまた違うものである。この本がなかったらこの戦争は人々の記憶から薄れていくことになったかもしれない。歴史書に分類したい作品だ。
取材によって集めた情報を整理して一本の小説として仕上げる。よくぞここまでと感心しました。相当な人数が登場するにも関わらず、それぞれの心情までを緻密に描いており、映像になっていなかった家族や恋人、ソマリア市民、NPO関係者、果ては米本国までブラックホーク墜落の事件にまつわる数々のエピソードが書かれています。 そして誰もが知りたいと思った事件の顛末を「下巻」で知ることが出来ます。
湾岸戦争での大勝利の後、比類なき空軍、海軍、陸軍そして海兵隊を持つアメリカ合衆国軍隊は、圧倒的な物量と科学技術の差により「世界の警察官」たる地位と実力を誇っていた。その米軍にベトナム戦争の悪夢が甦ったと言っても過言ではなかったソマリア内戦は、作戦に使用する兵器の種類まで限定しようとする政府中央、アイディード将軍率いる民兵に対する奢り、そして自分たちが無敵であると信じていた陸海空軍の特殊部隊隊員達の多くの損害によって幕を閉じた。作戦開始直後に支援ヘリ「ブラックホーク」が墜落するという予想もしなかった事故に作戦そのものの歯車が狂い始め、現場から離れた指揮官達の誤った指示がさらに事態を悪化させ、多くの死傷者を出す。つねに圧倒的な兵力で作戦を勝利に導いて!!!た米軍が、湾岸戦争での自らの成功体験に溺れていたことを兵士の血で証明したのがこの作戦だったのかもしれない。