読み終わって改めてこう思いました! 本は、装丁と題名が重要だと・・・。
もし自分が店舗のマネージャーなら、この本はまさにバイブルのように毎晩読んで寝るかもしれない。それくらい、過去の調査に裏付けられたアイデアがちりばめられている。<P> 私は店舗のマネージャーではありませんが、それでもこの本を読んだあと買い物をするのがすこし楽しくなる。「なるほど、調査結果の通りだ」を思って一人にやりとするのである。また、いつも当たり前に受けているサービスも、実は心理学を利用した工夫なのだという発見もある。逆に、よいサービスを行っているかどうかを選別できる消費者が増えて困ったと言う店もあるかもしれない。
この本はそのタイトルの通りショッピングを科学する、即ちマーケティングの分野を中心に書かれたものであるが、マーケティング分野の人のみならず「人間を観察対象として捉える科学」の分野に携わる人から、普通の買い物をする人に至るまで幅広く興味をかきたてるものである。<P>著者のパコ・アンダーヒルは元々ニューヨーク市立大学の非常勤講師で、環境心理学の学生にフィールドワークの手法を教えていた。彼の専門はフィールドワークであり、民族学が研究対象としなかった、しかし現代社会においては欠かすことができない、売り手も買い手も興味の尽きない「ショッピング」という人間の活動に応用し、メスを入れたのである。<P>彼の用いる方法は、ひたすら忍耐強い「観察」である。店内のある場所にカメラを固定し、何十時間も定点観測をする。現段階で既に数十万時間におよぶ膨大な資料が蓄積されており、そこから数々の有用な知見が生まれてきた。<P>また、観察は定点のみではなく、「トラッカー」と呼ばれる訓練を重ねた追跡者がいる。いつ、どこで、どのような風貌でいくつぐらいの人がどのようなタイミングで何を手に取り何を購入したか、といったことを詳細に記録していくのである。<P>こうして得られた膨大なデータの観察から問題のある商品の配置や通路の幅、あるいは客の行動パターンなどを明らかにし、ほんの少し店舗の構成を変更するだけで飛躍的に売上が伸びるような成果をあげている。そしてご存知スターバックスや、GAPといった数々のクライアントを小売業界の第一線へと導いたのである。<P>なぜ我々には「好きな店」「嫌いな店」があるのか?その判断の原因はどういうところにあるのか?そしてどうすれば「良い店」を構成できるのか?改善の糸口は彼の調査にある。そしてここで用いられる手法はあらゆる分野の研究者にとって有益な知見をもたらすことを約束する。