昔、地上に、ゼロは、なかった。<BR> ゼロは、かつて、発見され、異端視され、双子の兄弟ともいえる無限大とともに、忌み嫌われ、排除された。<P> しかし、現代の我我は、ゼロという数字を、忌み嫌っていないし、排除していない。なくてはならない数字だ。(冒頭で、ゼロによってアメリカの軍艦ヨークタウンがただの鉄の塊になってしまったというエピソードが紹介されているが)<P> ゼロ(と無限大)が、どのように発見され、消され、また復活し、受け入れられて来たのか、その歴史物語を、何万年も前の古代から、説き明かしてくれる。<BR> その過程で、ゼノンのパラドクスや、微積分、絶対零度、相対性理論などについて、わかり易く教えてくれる。<P> 文字が小さくて、字数も多いが、結構スラスラと読めた。数字や数学に興味のある、一般の人に、面白い内容だと思う。
ゼロという数の歴史と、ゼロの発明が数学・物理学をはじめ、哲学や宗教、化学など、様々な分野に与えた影響を解説すると同時に、ゼロとその影としての無限大を切り口に、数学や物理学の様々な原理や理論を分かりやすく紹介している。最初のゼロという数の歴史については、すでに古典とも言える吉田洋一「ゼロの発見」とも共通する部分があるのだけれど、それ以降の部分がまた非常におもしろい。数学の簡単なところでは微積分から高度なところでは複素数の概念まで、そして物理学の領域では相対性理論や量子力学、ひも理論まで、最先端の領域も含めた幅広い領域をカバーしていながらも、非常に分かりやすく書かれている。基礎的な教養として数学や物理学の知識を身に付けるのには素晴らしい内容。対象としては高校生以上向けでしょう。