「ひとつの時代が過ぎ去るというのは、その時代を構築していた諸条件が消えること」<BR>本書では、当時のことは当時の状況に振り返ってみなければ理解できない、という趣旨で書かれています。<P>しかし、私が考えたのは今の日本の経済政策でした。<P>人口も経済も右肩上がりに上昇することを前提としていたものが、こうした諸条件の変化に政策が対応できなくなっています。<BR>それでも、希望的観測や楽観論に基づく政策は続いていくのです。<BR>本書の第4巻以降でも、希望的観測や楽観論による作戦が度々紹介されます。<P>変化を読み取る、計画を修正する、実行する。これらがいかに難しいことかを、改めて考えさせる本です。
本巻には、子規が死に、日露戦争が始まるまでを収めてある。<BR>ところで、わたしは先年ウラジオストックを訪れたとき、本書を持参した。本巻の中ほどに、ちょうど秋山好古が戦前にウラジオを訪問する場面がある。ウラジオは山が迫る港町で、おそらく好古が見たと同じ景色を見ることができた。山腹には対空砲台がみえた。酒席の気持ちよさも本の通りだった。<P>開戦直後、仁川で沈んだワリヤーグ乗員の墓標も見たし、マカロフ提督の銅像とも対面した。見るものすべてが、妙に本の内容と重なって見え、おもわぬ旅行ガイドになった。<BR>本巻を通じて感じるのは、当時の日本人の真剣さであるが、ロシア側からその裏付けを見たように感じた。