暗い活動としてしか思われない「戦争」というものの一つの形を描いた作品。<BR>苦難の時代、世界の中の「日本国」として大国ロシアといかに戦ったのかを描く大歴史小説。<BR>戦争というものの真実を知りたい人、あまり深く考えてみたことが無い人にぜひ読んでもらいたい。
歴史小説自体、今まで手をつけたことがなかった私が、この本を読んだキッカケは、実は昨年の同時多発テロです。<P>それまで、世界の歴史、日本の歴史ともに教科書でなぞった程度しか知らず、(当然、中身のない歴史知識です。)世界で起こっている様々の悲惨な事象を、「なんで?どうしてこんなことが起るの?」としか感想を持てなかった自分がいました。民族同士の衝突・アメリカ型資本主義経済による代償はもちろん知っています。だけど、もっと本質的な理由を、欲しました。<BR>そして父に、司馬遼太郎さんの歴史小説を薦められ、「竜馬がゆく」「花神」などを経て、本書「坂の上の雲」を読み終えました。<BR>歴史小説とはいえ、司馬遼太郎さんの文章はとても読みやすく、情感も溢れとても入り込みました<!!P>私はそれまで、明治・昭和の時代というのはとても暗い時代であるイメージがありましたが、少なくとも明治の日本は違いました。「国家」を持つということの人間としての自由感を、現代日本に生きる私は初めて知りました。坂の上の青い天に浮かぶ小さな白い雲を、ただただ見つめて上りつづけた(あとがき1より)明治の時代人達の生様に、心打たれました。「時代」というものの深さ、その大きな流れ・うねり・・・。世界の列強による侵略政策のうねり。<BR>日本人として、今からは想像もつかないほどの純粋な愛国心をもって、その時代を生きた彼らを、誇りに思います。日本人として知らなければいけない歴史でした。司馬遼太郎さんに教えてもらいました。<P>そして、現代の世界も、形態こそ変わっても、その延長!!あると考えます。<BR>世界の物事を、善・悪の分別だけしていては、何も変わらないのかもしれません。それぞれにはそれぞれの、歴史があり時代があるからです。<BR>読み終えた今、本当に読んでよかったと思います。<P>私自身、20代前半の女ですが、男も女も関係なく、多くの若い世代に読んでもらいたいです。(本当に読みやすいから大丈夫!)
いよいよ最終巻、海戦史上奇跡のパーフェクトゲームとしか言いようのない日本海海戦を劇的に描き、この物語も終結する。<P> 確かに真之は、軍事的天才であった。好古は、「騎兵」という新概念に基づく組織を立ち上げ、率いた幹部として、やはり一種の天才であった。そして、若い日本の若いリーダーや国民たちが、それぞれの持ち場で全力をつくしたが故に、日露戦争で僅差の軍事的勝利を得ることができた。<P> しかし、この時代の日本が真に偉大であったのは、その軍事的勝利をあくまでも和平のためのカードとして使うことのできた冷静さであった。正確な自己認識と明確な戦略目標(朝鮮半島からロシアの脅威を除けば、それ以上の拡大政策をとらない)によって国を救った明治日本の外交能力は、平成の外!!省とは、能力的にも倫理的にもおよそ比較にならない高みに達していたことが痛感される。