日本はバブル期からずっとグルメブームが続いている。食に関する本やテレビ番組は多いが、出す方の情報はほとんどない。人間食べれば出るのは当たり前、出なかったら化け物である。こんな大切なことをこの本は教えてくれる。世界、特にアジア地域のトイレ事情がよく分かる。中国の開放便所(思想は開放していないが)やエコロジーな動物の糞食を利用した便所など日本も見習えそうな内容ばかりである。江戸時代は日本も肥といって人糞を肥料として用い、大量の野菜供給に一役かっていた。そんな大切な黄金をただ捨てるのは本当にもったいない。アジアの人々にならい、糞の有効利用を考える良い機会になる本である。著者には今度アフリカや南米のトイレ事情も取材してほしい。
コアなサイクリストやバックパッカーにとって「便所」は人ごとではない関心事であろう。<BR>何しろ彼らには、今日、日本で見るような快適な便所は用意されていないのだから。<P>よって、バックパッカーであり世界中を自転車で走ったサイクリストでもある「コアな」著者(斉藤政喜)がアジアの便所を紹介する本書を執筆したのは自然な成り行きである。<P>本書は、ややもすれば汚くなりがちな(実際、汚い)便所という対象に真っ向から挑みつつも、快適に読書できるように様々な工夫がなされている。<P>まず、取材にはイラストレータの内沢旬子氏が帯同し、写真ではなくイラストによって便所を図解している。イラストにすることによって「汚さ」は省略され、かつ細部は写真よりも正確に描写できる。第一、便所を写真で表現するのはアングルの点から非常に困難である。このことは妹尾河童氏の「河童が覗いた…」シリーズを読んだ方なら納得して頂けるであろう。<P>そして著者の軽妙洒脱な文章で面白おかしく各国の便所事情が紹介される。<BR>また、男女のチームで取材にあたったことから男便所も女便所もカバーされている。<P>なお、イラストを担当された内沢旬子氏は「美本」の収集家としても有名で(便所と美本のギャップがまた面白い)、各国の美本を(読めもしないのに)熱心に追求している人物である。その彼女が韓国で美本を追い求めたエピソードが下川裕治編著の「アジア大バザール」で読める。こちらもお薦めである。