巷に氾濫するひたすら明るく陽気なイタリアを謳った本とは一線を画したうつくしいエッセイ。 イタリア事情や文化・言語についての著者の落ち着いた洞察と豊かな知識が窺え、安心して読めます。<P>また、磨きぬかれた日本語が読んでいて心地よく、文章やことばのひとつひとつを選びに選んで丁寧に書かれているので心の奥まで情景が沁みとおり、気持ちが穏やかになります。 深くイタリアに取り憑かれている(?)友人、イタリアでの滞在を決心した友人などに是非読んでもらいたく、しばしば贈っている本です。
男の私が好きというのも変かもしれないが、白洲正子さん、幸田綾さんなど女性特有の強さ、しなやかさを兼ね備えた文章というのはとてもいい。そこに品のよさが加わると、私好みの女性作家ということになる。そういう意味で須賀敦子さんも上記の作家軍に入ることになる。3人に共通しているのは、もともとは上流の生活をしていたお嬢さんではあるが、揃って生活苦を体験しているという点である。女性は強い。生活苦が彼女たちの真の素晴らしさを磨いた言っても過言ではないだろう。<P>ところで「コルシカ書店の仲間たち」は、貧乏ではあるが夢に燃えている作者とその留学先(イタリア)で出会った仲間との日常をつづった回顧文である。わざとらしい熱血を感じるわけでもなく、どこまでも洗練された文章が綴らたその本はさわやかな読後感を与える。