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| 傷―邦銀崩壊〈下〉
(
幸田 真音
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上巻がニューヨークを舞台に主人公「州波」の完璧な非の打ち所のない姿を描いたものとすれば下巻は東京に場所を変えて、州波の本当の姿をリアルに著している。本当の姿とは我々人間が誰しも持っている弱い面や失敗、トラウマなどであり、それらの「傷」を隠して生きる人間は表面的には大変強く完璧な人間に見えるが、強い人間ほど深い傷があることを州波を通じて我々に考えさせてくれる。<BR>全体的にスピード感があり人間描写はもちろん金融についても書かれてあるので金融業界の方には特に面白く読めるのではないでしょうか? 最初の1ページからぐいぐいと引き付けられて、一気に3日で読み終えてしまいました。 ニューヨークからの物語の始まり、東京に舞台が移っていくときの描写は、なんだか昔の映画を観ているような感じでした。<P>題名の『傷』というのが、主人公の傷と重なって、邦銀の傷ともなっていきますが、誰にもある心の深い傷も、引き上げられるようで、ドキリとさせられます。 インターネットが、ここまで普及してきた今、とても時流に乗っているようですが、最初に書かれたのが年1998年というのには、驚きました。
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