著者の描く寅次郎、著者の作り上げた長州藩、著者の考えた江戸時代などが個性豊かに展開される。<BR> 吉田寅次郎が長州の海岸を歩き、九州を歩き、江戸・東北を歩く。ときに脱藩して歩く。歩く、あるく。異国を見、人物を探し、本を求めて歩く。好奇心、自負、藩への責任感、地理・兵術への精進、師・友。<P> 明治の日本人が、一日怠ければ一日国家の後退と感じたという。幕末の長州人も同じであったのだろうか。同じ幸福な思い込みが、ここにもあったようだ。<BR> 長州という藩に、個性がある。それは幕末を主導するに足る開明性と柔軟性をもつと同時に、のちの日本陸軍の下克上に通じるような、若者への「甘さ」をも併せ持っているようである。<P> 江戸の日本は地方に人物を得ていたという。江戸の御家人・旗本よりも、地方の読書人のほうが教養高かったという。いまは、どうであろう。そうした連想が広がる。<P> バブルの崩壊以後、多少、乱世の趣がある。どの会社でも、従来の選抜方式によるエリートなり幹部なりが、昔ほど役に立たなくなってきているのかもしれない。お家の一大事・・などという妄想にひたりながら読んだ。
「おもしろきこともなき世をおもしろく 住みなすものは心なりけり」<P> 幕末の稀有の天才 高杉ちょうふ!!<BR>折りたたみの三味線を持ちながら、放蕩という立て札の裏で戦略を練る。<BR>馬関の潮の流れをバックにわずか30年が100年に相当した<BR>激動の時代。あまりにも充実した長州藩の物語である。<BR> もちろん松蔭の「今日の一日も一生の中の一日」という言葉が<BR><BR>それを物語っている。<BR> 戸田市在住川島のバイブルであります。是非20代で読んでいただきたい作品であります。
吉田松陰と高杉晋作の一生を通じて、幕末の雄長州藩を描いている作品。史実については、最近の新研究と齟齬を生じる部分もあるが、両者の人生を大まかに捉えるには充分だと思う。楽しんで読んで、興味を持ったら他にも色々読んでみると、幕末への理解が深まり、ひいてはいまの日本に対する視点も変わってくるだろう。勤皇派については、これと「竜馬がゆく」を合わせて読むのがオススメ。高杉晋作楽しむなら、「十一番目の志士」「花神」をどうぞ。