家族の日常からなにげなく始まるのだけれど、どこかアンバランスなものをじわじわ感じさせてきます。日常と共に語られ始める家族内での一人一人の在り方が明らかになるたびに、そのバランスのゆれが大きくなってゆき、読んでるこちらの恐怖もあおられます。<P> そして、父が抜け・・、妹が抜け・・、母が抜け・・じわじわ歌われる恐怖の数え歌。恐怖の旋律にのって、潮が満ちるように長兄が禁忌を踏み越えて近づいてくる予感と気配。次男が長兄にあっけなくっも唐突に踏みにじられるその禁断の瞬間はあまりにも鮮烈で悲しいです。<P> 恐ろしいことに、この恐怖も悲しみもこれから続くのです。次男は逃げ場が無いのに、長兄によってどこまでもどこまでも喘がされながら、追い詰められ、嬲られ、悶え苦し!・・・、これはすんごいホラー小説だと思います。あー、恐かった。<BR>
どこにでもある平凡な家庭。<BR>頼りになる父、そして優しい母、篠宮の自慢な長兄の雅紀、勝ち気な姉の沙也、やんちゃな三男の裕太。<BR> そんな個性の強い兄弟のなかでは控えめ性格な為「沙也の弟」「裕太の兄」と呼ばれる次男の尚人。<P> ある日、父の不倫をきっかけに家族はばらばらになっていく。そんなある晩、尚人は母の部屋から出て来る兄の雅紀をみてしまい・・・。<BR> 母の死という更なる悲劇が、最後の歯止めがなくなり兄弟の関係が崩壊する。<P>