この本は野球本にもビジネス書にもなりえる多彩な面を備えています。 しかし、この本の一番の魅力は他から相手にされなかった男,一度ならず挫折した男,放出された男たちが再び立ち上がり,這い上がり,復讐していく生き様です。<BR> 今でこそヤンキ-スの中軸をつとめるジアンビも、かつてはその一人でした。<P> この本の中でも、ジアンビの「穴埋め」としてA'sに加入するスコット・ハッテバーグの章は胸を打ちます。<BR> 挫折を経験してきた人にはもちろん、各チームから四番打者ばかり集めて勝てない某チーム,財政難を言い訳に負け犬に成り下がっている某球団関係者,要は日本の野球関係者全てに読んでいただきたい本です。
ぼくら野球ファンはチームの勝ち負けもさることながらプレーヤーの個人成績にも当然のようにこだわります。スポーツ新聞で「打率」「打点」「本塁打数」「防御率」「盗塁数」「勝敗」「勝率」のチェックは欠かさず、各々の選手の能力はこういうデータで計られることに疑問をもつ人ってあんまりいないでしょう。<P>オークランドAsのGMビリーは’80sの野球データアナリストのリサーチで、一部からは支持されていたものの肝心の野球人からはほとんど無視されていた研究結果に触発され、これまで経験豊富なスカウトの眼力に頼ったポテンシャル・運動能力重視のスカウティングから、ネットをフル活用したデータ重視、「出塁率」に絶対のプライオリティーをおいた選手獲得に乗り出す。<P>投手の能力は、三!数・四球数・ホームランorゴロを打たせる確率によって計られるべき、と。「セーブ」「打点」はシチュエーションによりけりの偶然の産物、選手個々の能力とは別物と一刀両断。<P>上述のようにこれらアイディアは一部では知られていましたからビリーのオリジナルという訳ではありませんがハーバード卒アシスタント(野球経験なし)を使ってビジネスメソッドとして確立したのはまさしくビリーの功績。トレード期限ぎりぎりの選手の「ディーリング」もまたビリーの商売人ぶりの真骨頂として描かれ、エキサイティングな米野球ビジネスの実像が満載。<P>マイケル・ルイスの軽妙なタッチで野球ファンならずともさらっと読める楽しい本ですが、野球ファンなら「立ち止まって」じっくり読まされるところが数多い。ジアン!ーがいなくなっても勝ち続ける訳だ。
選手年俸MLB30球団中下から2番目のチームながら、余計な経費を使わず、2年連続でプレーオフに進出したオークランド・アスレチックスのGMの手腕をくまなく描写した本。有望といわれながら控えに甘んじて選手キャリアを終えたが、全く斬新なGMとして、チームだけでなくMLB全体に強い影響力を持っている事は疑いの余地がない。開幕時では全く手がでない高年俸選手を7月のトレード時期に格安にて獲得したり、フリーエージェントで出ていった選手の穴を、トータル的に埋めることができる掘り出し物中堅選手との契約。表面的でない統計を操るウォールストリートには興味がないハーバード卒のブレーンをもとに、プレイオフに連続して出場した手腕は、ドラフト対象選手にも活かされている。金満球団でないがために、選!が年俸調停そしてフリーエージェント資格を獲得し市場価格が高騰するまでに、大化けさせると必要があるというプレッシャーのなか、今後も若手の育成と勝つ事を両立していけるのか、新たな視点からオークランドA’sの見方を投げかけたくれた1冊。ビリー・ビーンの下で徹底した効率化を習得し、現在トロント・ブルージェイズにてビリー手法を実践して結果を出しつつあるGMが出てきたというのも面白い。