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| ギュンター・ヴァント―音楽への孤高の奉仕と不断の闘い
(
ヴォルフガング ザイフェルト
Seifert Wolfgang
根岸 一美
)
ギュンター・ヴァント――特にその音楽作り――を知る者にとって、この本で新たに発見することはほとんどない。だがその知識を強め、確信させ、その上で、この不世出の指揮者が生きた前世紀を程良いテンポで反芻させてくれる。これは、そうした得難い一冊である。400ページ弱という分量も、原著が、往復書簡や議事録など、資料的な内容を割愛して半分になってのもの。現代に生きる人物の資料は膨大だが、ことヴァントに関しては、音楽についてはもちろん、評論においても、あの「ヴァント・クォリティ」が保たれている。印象的なのは楽譜への接し方――「その自筆譜をじっと眺めてみると、モーツァルトが五線紙に記すときには、すでに作曲のプロセスがほとんどいつも頭のなかでは完成していたことがはっきりしてくる」(p.21)、「ベートーヴェンは明らかにこの箇所とは格闘して、結局、音声の実現可能性よりも、シュトゥルツという思想をより高く位置づけた」(p.101)、「通貨改革前の当時にあっては新しいレコードや再生装置はまだ出回っていなかったのです。それゆえ私は楽譜に頼って、それを『正しく』、つまり作曲家の意図に従って解釈するよう試みるほかありませんでした。」(p.163)。ヴァント語録は続く――「陶酔のうちに自己を失うことは簡単なこと……それを制御し、同時に形を与えること、こうしたことはおそらく最も難しい事柄」(p.293)、「大切なことは、作曲家たちに無条件に語らせること……解釈は干渉」(p.310)、「それを作り出したのは偉大な人々ですが、彼らは性格も生き方もそれぞれ異なります…<BR>しかし、一つ共通するところがあります。彼らはいずれも、人々を上へと導いてゆく何かを創り出しているのです」(p.371)。読みやすい翻訳であっという間にページが飛んでゆき、ヴァントの音楽を無性に聴きたくなること間違いなし!
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