「初の自伝的私小説」と帯にあるのを見て、え?私小説なら、今までいくつも書いてるんじゃないの?と思いました。で、読んでみたんですが、これは、長編の自伝的エッセイを3本まとめた本ですね。確かに、過去の彼女の私小説は「自伝」として書いてあったわけではないし、細部までそのままだったわけでもないだろうから、「初」と言えば「初」なのだろうけど、ちょっと宣伝文句としては感心しませんね。<BR>そういうことを抜きにすれば、いつも通り、読みごたえのある本でした。単に彼女の身の回りに劇的な出来事が多いというだけではない、才能というか、実力ですね。
鷺沢萌の作品は一冊も読んだことがありませんでした。帯と表紙の家族写真にひかれて手にとってみました。<P>彼女の乾いた気持ちの表現方法が、妙に心に焼きついてぐいぐいと読むことができました。母親の病気という現実にのめりこみもせず、かといってつきはなしもせず、つらいながらも一緒にいようとする彼女の姿勢が、心情がしんしんと伝わってきて共感できます。<P>また、私の話2002の川崎を舞台に語られる識字学級の話もとても良かったと思いました。とかく、むずかしく語られがちなこのテーマですが、自身も韓国留学していたことや、祖母とのかかわりなどから、彼女なりのアプローチの仕方が実に、さりげなく、またなによりも心温かいものがあると感じます。<BR>鷺沢萌・・自身の作品も読んでみたくなりました。
自伝的私小説とのことで、鷺沢ファンとして非常に期待して読みましたが、帯にも書かれているような父親の死についてや、家庭の経済的な破綻、結婚生活などは詳しいことは書かれておらず、確かに鷺沢萠の半生が書かれているのだが、帯を読んで買ったファンなら、かなり物足りなさを感じるでしょうし、個人的には不満の残る私小説で、これまでの半生についてをより詳しく掘り下げて書いてほしかったです。