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| 行動ファイナンス―金融市場と投資家心理のパズル
(
角田 康夫
)
相場は人が動かすものであり、人の行動を予測するためには、心理学は必須のものだ。行動ファイナンスは相場にアプローチする数ある学問の中で最も本質に迫っているものなのかもしれない。
行動ファイナンスをわかりやすく体系的にまとめた好著である。<P>著者は、信託銀行で年金資産を対象に運用モデルの開発と投資理論の研究に従事している資産運用のプロであり、ポートフォリオ運用の理論と運用現場での適用を実務者の観点から説明した著作で知られている。<P>行動ファイナンスは、ファイナンスにおける新興分野で、証券アナリスト試験でもカバーされはじめたトピックである。しかし、従来の本では心理学的な側面が過分に強調された解説が多く、私は物足りなく感じていた。投資家の投資判断には「心の会計」、「代表的ヒューリスティック」、「フレーム」、「損失回避」などの心理的バイアスが働くという指摘そのものには、開明させられるが、心理的バイアスに気づいた投資家が、実際にどのように投資行動をとるべきかという指南に欠けていたからである。<P>その点、本書では、行動ファイナンスの理論の説明に始まり、実証研究の紹介、実際の投資への適用の全てが網羅されており、行動ファイナンスでは初めての入門書と言える。なによりも良いのは、専門用語の濫用がなく、平易なわかりやすい言葉で書かれていることである。通勤途中の電車で、就寝前のベッドの中でも充分理解できて、内容も濃い。第1、2章は、行動ファイナンスの理論の説明であり、投資家の心理的バイアスの事例が紹介されている。<BR>普通人の日記のなかに心理的バイアスの作用を読み取ったり、冒頭にクイズがあり解説が続くようになっていたりと、面白く読み進むことができる。第3章では、株式市場のアノマリーに対する行動ファイナンスの解釈と実証研究が紹介されている。「標準ファイナンス」との対比がきちんとなされているほか、「ノイズトレーダー仮説」を正しいとする立場からの論証も紹介されているなど、第1、2章とはうってかわってアカデミックな内容だ。第4章は、行動ファイナンスの実務への応用であり、行動ファイナンス学者が自ら運用する投資信託における銘柄選択ルールが紹介されている。運用会社のファンドマネージャーやアナリストがある銘柄の株価に対して過小反応・過剰反応を示しているかどうかを調査していることには、感嘆する。ケインズの美人投票の裏をかくような戦略に、投資とはかくも奥の深いマインドゲームなのかという感想を持つと同時に、ファンダメンタル分析行った上でそのような調査をする彼らの分析量の多さに圧倒される。<P>冒頭にも述べたとおり、本書は行動ファイナンスをわかりやすく体系的にまとめた入門書であり、個人投資家と機関投資家のどちらが読んでも満足できる本である。一読を勧めたい。
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