「学校で教えてくれない」という標題にだまされてはいけません。これは正統的な学校文法をどう解釈に生かすかを説いた本です。ですから、学校文法がわからないという方が、この本に安直な説明を求めるとアテが外れます。非常に本格的で高度な内容です。内容は断片的なコラムの集成で、体系性はありません。しかし、確かにこのようなポイントに注意するのだなという要所がかなり広範囲に網羅されています。英文解釈のヒントにとも言うべき知恵が満載された本です。
本書は、英文解釈や英作文を行う上で文法上留意すべき55のポイントを設問・解答形式で解説したものである。本書の書名とは異なり内容はオーソドックスな文法にのっとり理詰めで論旨は明快である。内容が濃いので読むのに時間がかかったが有益だった。<P>一例を挙げよう。米国のリンカーン大統領が1863年ゲチスバーグで行った演説"government of the people,by the people,for the people"は従来「人民の、人民による、人民のための政治」と訳されていた。しかし、この訳文をよく読むと「人民の」というのは何を意味するのか判然としない。実はこれは名詞構文と言って、述語動詞をその名詞形に変える事によって文を名詞化したもので"government"は「統治する事」であり "people"は"govern"の意味上の目的語である。従って"government of the people"は「人民を統治する事」となる。従ってリンカーンの言葉は「人民を、人民が、人民のために統治する事」となるのである。<P>なお、設問は半数以上が大学入試問題より採用されている。
精読を中心としたリーディングの重要性を説いてきた著者による文法解説書。授業で大学入試の頻出問題集の演習(答え合わせ?)に時間を割くような昨今では、この本で示されているような「まっとうな学習者の素朴な疑問」に丁寧に答えている時間はないのかもしれない。『マスター入試英語長文』(吾妻書房)では、この手の疑問点を含む長文(今では中文か?)を集めて一冊の問題集兼参考書にしていた。ただし、英文法の全体像を掴むには、この著者も推薦する『英文法詳解』(杉山忠一著、学研)と合わせ読むのがいいだろう。