過去、何度かインドに行ったが、人々の身分の違いなどははたからみていると分からない。細分化され、強制された身分とその職業制度は、日本とかけ離れていてぴんとこない人が大半だと思う。不可植民と言われる人々の徹底的に蔑まされた人生は、人が考えうる限りを尽くした差別といじめの集大成だ。この本を読んで驚いてほしい。そして、日常、気にもかけないような差別、例えば自分の家族と隣の家族との差別さえ、悲劇的な差別の萌芽になりうる事を考えたい。更に、その状況を先入観無しに考える事が出来る日本という国に住む私達の役割についても考えてみたい。多くの人と共に。
現在もなお続くインドでの人種差別「カースト」を、差別される人々の立場からじっくり取材したドキュメンタリ。著者が被差別社会に飛び込み、これほどまでに凄まじい悲惨な現状を報告した本はほどんど例を見ない。日本の人口とほぼ同じ人々が、強烈に差別され虐げられているインドの影の部分。内容はとても読みやすく、一気に読める本。
想像を絶する差別の中で生きている人々が存在するということを、わからせてくれる一冊だった。私は一度インドを訪れたことがあるのだが、デリーからアグラまで車で案内された時に垣間見たスラムの風景は、非常に忘れがたいものだった。ただ愕然とし表現しようにも表現できる語彙を見つけることができない感情は、今まで味わったことがなかった。この本は、表現できないのは当然だということを、筆者の体験談を通じて解らせてくれた。インドの現実は、あまりにも非現実的で理不尽に存在しているということ、又 ヒンドゥイズムの根源であるカーストが、彼らの社会生活をいかにがんじがらめにしているのかということ、そして人間の強靭さを記されている一冊だった。