報道で拝見する限り、家族会の方々は大変にタフで行動力があり、何か特別な人々のように感じていた。しかし、あれほどまでにタフにならざるを得なかったのは、この問題を国が放置しつづけ、正に見て見ぬふりをしてきたためであるとわかった。どのご家族も皆、普通の生活をしている小さな一人の日本人であったのに、突然大きな波にのみこまれた。相手は個人の力など及ばない北朝鮮。なのに国は何もしない。この国の裏切り行為の前に、個人は大きなエネルギーを養っていく。こんな言い方はあまりにも不謹慎かもしれないけれど、私はご家族の姿に心から感動させられた。「家族なら当たり前」と言われるかもしれないが、携帯さえ持ってれば娘がプチ家出してもOKな家庭が多く存在する現代の日本で、四半世紀孤立無援で二つの国家と闘いつづけることは「当たり前」ではない。この本では触れられていないが、地村保さんは人口80万人の福井県から57万人分の署名をかき集めたと何かで読んだ。この驚異的な数には敬意を表すしかない。そして、数年前まで関心すら持たなかった自分を深く恥じた。これほどの愛を見せつけられて、私は絶対にこの問題を忘れないと誓った。ブルーリボンが支援を続ける皆の胸から笑顔ではずされる日まで。
拉致家族のうち、すでに横田めぐみさんと、蓮池薫さんについては、それぞれ、『めぐみ、お母さんがきっと助けてあげる』、『奪還』が出版されているので、詳しい経緯を読まれた方も多いだろう。しかし、この本では、地村さん・浜本さん夫妻、有本恵子さん、市川さん・増元さんカップルなどの経緯についても触れられてたのがよかった。<P>私がこの中で特に興味深かったのは、拉致家族でありながら、家族会に参加せずに、独自に北朝鮮にいる息子と交流している寺越さんだった。新聞等の報道では、なぜ寺越さんが家族会とは違った行動をとっているのか、正直言ってよく分からなかったが、この本では、その真相も語られていた。<P>すべての家族の苦悩を読み、いかにこの国が、国として崩壊しているか非常によくわかった。自国の同胞を取り戻すのに、卑屈なぐらい及び腰の政府と外務省。普段は人権、人権と大騒ぎするくせに、相手が北朝鮮となると、黙殺するマスコミ。<P>そこまで考えると、国民一人一人にもそんな売国政治家や似非マスコミをのさばらせた責任はあると思う。もちろん、私も含めて。<P>ぜひ一度、この本を読んで、国とは何か、人権とは何か、私たちに何が出来るのか、を考えたい。その行動が、拉致問題解決の大きな原動力となることを祈りながら。
…一言でいうと拉致被害者の家族の方々の時間列に沿った形で淡々と記述していく一切嘘の無い魂のドキュメント本。<P>「…犯罪当事国の揺さぶり、脅しにビビりまくって根拠の無い出口外交を未だ信じきっているこの政府と外交関係者とは一体何なのか・・・主権侵害に断固たる姿勢を取れない国家にそもそも存在意義があるのだろうか…」としみじみ考えてしまった。政局に利用する事しか考えてないのでしょうか最高責任者は。こんな弱腰売国民外交に現在進行形で翻弄され続けている被害者と家族の方々。本当に心の底から同情と畏敬の念を表じ得ません。この本の鮮やかなブルーの色彩に込めた全面解決の祈り。一人の人間として最後まで信じたい。ブルーリボンの願い。<P>★五つ。