今やPRIDE統括本部長という肩書きを持ち、「高田劇場」がPRIDEの名物となり、現役末期より人気を博しているのではないかと思える高田延彦の半生期。<P>現役時代は高田の生の声が雑誌等のインタビューを通して伝わってくることが少なかっただけに、あの時、あの当時の彼の本心を知る上で、UWF~PRIDEとともに生きてきたプロレスファン、格闘技ファンにとっては必読の一冊である。<P>いわゆる暴露的な内容も含まれてはいるが、それがメインではなく、高田の格闘人生を振り返る上で欠かせない内容がさりげなく散りばめられている。とはいえ、私が一番知りたかった対北尾戦の戦慄のハイキックの真相を初めとし、バービック戦、10.9武藤戦の舞台裏、田村との確執、ヒクソン戦、幻のタイソン戦等、高田、あるいはUインターにとってキーポイントとなった事件についてきっちりと描かれており、鈴木健氏、宮戸氏の著書を読んでいる人でも十分読み応えがある。<P>プロレス=格闘技だと思いこみ、ヒクソン戦に挑んだ高田が、「実は格闘技の入り口にさえ到達していなかった」と気づかされる、あの10.11東京ドーム。その後、格闘技の魅力にとりつかれ、高田道場旗揚げ、PRIDEの継続参戦、そして惨敗の数々へと至る。当時は罵声を浴びせ続けられながらもリングにあがっていたが、過去の名声をかなぐり捨て、全盛期を過ぎてからリアルファイルの世界に飛び込んでいった高田の姿にはある意味、郷愁を感じるものがある。あと5年速く、UFCやPRIDEが存在していたら、彼の晩年の格闘人生も変わっていたものになっていたのかもしれない。
華やかな世界で生きている人間が裏での様々な葛藤がうまく表現できている。幸せな気分になれるわけではなく、むしろ読んで少し切なくなった。虚像に隠された真実は知らないほうが良かったのかもしれない。知ってしまう事によって、失う物も多いだろう。もしかしたらプロレスを心から楽しめなくなる人もいるかもしれない。
金子という部外者と「高田」という商品をプロデュースするスタッフの<BR>マネジメント能力の高さ(非情さ?)により、程よいリアリティと情感<BR>を備え、判りやすくおもしろい本だった。読む人は格闘技好きも多いだ<BR>ろうから、格闘技の見方が変わる人が増えるのが懸念される。<BR>なにより格闘技に夢を持って志す若い人たち(昔の高田もそうだった様に)<P>が戸惑うのが心配。